マーケティングにおいて、多くの企業が注目するZ世代の消費行動。その一方で、“一括り”にするのが難しい彼らの価値観や行動パターンに対してのコミュニケーションに、試行錯誤する企業も少なくありません。そこで今回は、統合クリエイティブ事業本部の葛原 麻衣とデジタルクリエイティブ事業本部の八木 里都花、デジタルプロモーション事業本部の生駒 杏菜の3名が、Z世代のリアルを掘り下げ、彼らの心に響く“刺さるトレンド”とは何かを探ります。そして、博報堂プロダクツならではの、Z世代に向けた効果的なアプローチを考察します。
【目次】
多様すぎるZ世代。その共通点はどこに?
──Z世代といわれる世代を皆さんはどのようなイメージで捉えていますか。
生駒:自己発信だけでなく、他人の発信を受け入れる柔軟性にも優れているので、その両方のバランスがとてもナチュラルに備わっている世代だと捉えています。
葛原:私はギリギリZ世代に入るのですが、企業発信のものを見るよりも、人が発信しているものを見る機会が多いですね。SNSを含め情報社会とともに育ってきたと感じます。
八木:Z世代は1990年代後半から2010年代の前半に生まれた世代を指しますが、中学生から20代まで幅広く含まれるため、かなり多様です。私もZ世代といわれる世代なのですが、やはりSNSは結構見てしまいますね。
葛原:「博報堂買物研究所×HAKUHODO EC+「Z世代×ニューコマース調査」に、我々より上の世代が日本のブランドやメーカーを意識して買い物をしているという調査結果があったのですが、この結果は個人的には少し衝撃的でしたね。私は、それが良い物であれば生産国は気にしないタイプなので、自分にはない価値観でしたね。
生駒:そういった世代間の違いでいうと、若い世代になればなるほど「自分の好み」という枠から出ることがなかなか難しいのかなと感じます。昔はメディアが発信したものが流行るというのが一つの型でしたが、今はSNSのアルゴリズムで自分の興味関心に情報が寄り添っている。そこがZ世代への情報発信の難しさですね。
短く、速く、的確に。Z世代の情報収集スタイル
──情報収集のスピードや手段に特徴があるZ世代ですが、どのような方法を活用しているのでしょうか。
八木:例えば旅行に行くとなった時、これまでは本やWebで旅先の情報を調べていましたが、Z世代は、旅系のYouTuberやインフルエンサーが発信する動画コンテンツも参考にすることが多いと思います。
葛原:先ほどの話とも重なるのですが、企業からではなく、個人から発信される情報を重視する傾向がZ世代にはあるのかなと考えます。本当にそれが良い物なのかを判断する時に、口コミのような第三者目線の要素があると強いですね。
生駒:Z世代は、第三者発信として口コミ発信された情報でも「いや、これ広告だよね」と見抜く力もあります。また、他の世代にも影響力が大きい世代なので、ある意味その見抜く力の牽引役にもなり、生活者全般にも影響を与えていると感じています。なので、われわれコミュニケーションを設計する側は、広告・PRという発信を明記したうえで、その商品・サービスの魅力を知ってもらう、あくまでも着火剤の役割として活用していますね。本当の口コミを生んでいくためにどういう切り口で伝えたらいいのか、中身を重要視していますが、それを実現するのは容易ではありません。
──広告を発信する側の皆さんにとっては、なかなか厳しい状況ですね。
葛原:「広告は邪魔」みたいな価値観もあるので、好きになってもらえる要素をどこかに加えられたらいいなと、案件によって意識していますね。
生駒:ニュースづくりを通して広告・コミュニケーションを実施していくのがPRだったりするので、いかに発信していく情報が“世の中ごと”になるのかを意識しながらプランニングしています。
八木:動画の場合、Z世代をターゲットにするとリールやTikTokなど縦型動画でのコミュニケーションがメインになりやすいのですが、そこでも内容に興味がないとどんどん次に飛ばされてしまいます。Z世代は、短い時間でメリットや情報を手軽に得たいという、そんなタイパ重視の傾向があると強く実感しますね。
情報があふれているからこそ、いろいろ見て比較検討したいという気持ちはわかります。なので、広告を発信する側としては「伝えたい情報を必ずしも見てもらえるわけではない」という観点も大事なのかなと思います。
購買行動を左右する「失敗したくない」心理
──皆さん自身は口コミを参考に商品を購入することは多いですか。また、購入方法の一つとしてTikTokやライブコマースなどもありますが、Z世代には受けているのでしょうか。
葛原:コスメは口コミを参考にネットで購入することもあります。でも、洋服は着心地などのイメージが違ったら怖いので、店舗に行くこともあります。
生駒:私も“試したい派”ではありますが、試さなくても失敗を避けられるよう、パーソナルカラーの診断を受けました。世の中にアイテムがあふれているからこそ、まず自分に似合うかどうかのリサーチをするための基準を、Z世代中心に多くの生活者がもつようになったと思います。パーソナルカラーや骨格診断、顔タイプなど、ふるいにかけて購入する購買行動はよくみます。
八木:そういった基準づくりの診断系は結構みんなやっていますよね。私も試す派ですが、フォローしているインフルエンサーのコラボアイテムで、即売り切れてしまいそうな物はすぐに買ってしまいます。また、有名人の名前を出した「●●買い」というワードはよく聞きますね。
葛原:「TikTok買い」という言葉もよく耳にしますが、これはZ世代の中でももっと若い層向けなのかと感じています。そこで取り上げられて購買に繋がるものも、なんとなくZ世代に身近で比較的安価なものが多いかなと思います。
生駒:実は去年、ライブコマースの案件にたくさん携わったのですが、Z世代向けではなくもう少し上の、自分で働いて収入がある世代向けなのかなと思いました。自分のお財布に余裕がないと、思い立ってすぐに購入するという行動まで至らないと思います。特に学生は自分で自由に使えるお金に制限があるので、「買い物で失敗したくない」という心理も強くありそうですね。
海外からはいってきた安価なECサイトが流行っているのも、そういう理由からかもしれないです。
──このような特性をみると、Z世代を消費活動につなげるのはなかなか難しそうですね。
八木:クライアントからは「売りにつながるものを」という声をよく耳にしますが、Z世代は購買という行動に対してはとても慎重なのでそこがまず大きな課題になります。もう一つの課題としては、Z世代が共通して見ているメディアがない、ということが挙げられます。彼らはそれぞれに自分が信頼しているインフルエンサーがいるので、一括りにはできないのです。良くも悪くも個性を尊重させて育ってきている世代ではあるので、「全体としてはこうだよね」という共通認識が希薄なのかもしれないですね。
博報堂プロダクツだからできる、Z世代に刺さるアプローチ
──ここまでZ世代の情報収集や購買行動について話し合ってきましたが、彼らの特性をふまえて、博報堂プロダクツが提案・提供できるものとは何でしょうか。
生駒:Web検索して「Z世代ってこうだよね」と一般的な情報を得るのであれば、だれでもできることだと思います。しかし、私たちは調査機関などと連携して高校生や大学生にヒアリングし、画一的なZ世代像とは粒度の異なる“リアルな声”を集められます。そのような最初のステップからご一緒できるというのが、博報堂プロダクツの強みだと思っています。
また、発信ツールにおいても、単にZ世代のスタイルをセグメントして広告を打つということではなく、「#PR」から手離れした後に自然発信が行われるようなコピーライティングの考案や、インフルエンサーをはじめとする最適な発信者の選定など、立体的な提案も行うことが可能です。どうニュースをつくっていくのか、話題化できるのかをコンサルティングできるPRチームもいるのは強みだと考えています。
八木:私はモーションデザイナーとして多くの動画コンテンツに携わっていますが、社内のプランナーや他分野の専門家とも密接に連携しています。提案する際にも、プランナーからデータに基づいたプラットフォームを活用した論理的なアプローチ設計を立てたうえで、Z世代に響く動画コンテンツの企画演出や事例を組み合わせていくといった、単体の施策だけで終わらない一貫性をもったコミュニケーションを進めていくことができます。そういった社内間の共有スピードの速さも博報堂プロダクツならではですね。
また個人的には、常にインプットを積み重ねることが重要だと感じています。というのも、現在は流行り廃りがとても激しく、今何が注目されているのか、逆に何が避けられているのかを見極めることが求められるからです。そのため、常に最新の情報を取り入れて、自分の引き出しを増やしていくことを念頭に置いています。
葛原:例えば、「これならZ世代に受けるだろう」と安易な発想でタイアップ先に人気キャラクターを選んでも、そのキャラクターに対する本質的な理解や愛情が伴わないと、すぐに見抜かれてしまいます。そのため、私たちが提案する際には、「この人、わかっている!!」と思っていただけるように心がけています。ストレートな言い方になりますが「生活者をなめない」ということが大切だと考えています。
以前であれば、新聞広告一つで広く情報を届けることができた時代もありましたが、現在はWeb、動画、SNSといった多様なツールが統合的に活用されています。博報堂プロダクツでは、それぞれの分野に専門部員が揃っていて、一貫したトーンで最適なプロモーションを展開できることが強みです。統合プロモーションの特性を活かし、多岐にわたる取り組みが可能である点が博報堂プロダクツの魅力だと思います。
【プロフィール(取材時)】
葛原 麻衣
統合クリエイティブ事業本部
2018年入社。コンテンツを生かしたデザインが得意。核となるコンセプト開発からリアル体験~デジタル施策までのビジュアルを統合的に担当。
八木 里都花
デジタルクリエイティブ事業本部
2021年入社。モーショングラフィックスをメインとした演出・デザイン・編集を担当。Web広告やサイネージ、SNS広告など様々な媒体の映像を制作。
生駒 杏菜
デジタルプロモーション事業本部
2016年入社。PR発表会やリリース配信などベーシックなPR活動から、インフルエンサー活用など幅広く実施。化粧品や食品、車や電子機器など幅広い商材を担当。