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急成長するEC市場、次の一手を探る~2025年 EC業界のトレンドと課題~

 

近年、ECを中心としたコマース領域は急速に変化しています。リアル店舗との融合だけでなく、越境EC、顧客情報の保護と活用など、企業が対応すべき課題は多岐にわたります。これらの課題にどのように向き合い、どのような戦略をとるべきか。今回は、EC・コマースの現状を、数多くのクライアント業務を通じてECサイトの構築や運営などを担当し、多くのケーススタディの知見をもつ各担当者が最新の市場動向や課題、そしてそれに対する展望について語り合いました。

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【目次】

・OMOは進化の途中? リアル店舗との融合が生む新たなEC課題

・越境ECの注目の高まりと成功へのハードルとは

・スモールスタートはもう無謀? 2025年EC新規参入の鍵を探る

・EC成長の鍵は、多角的な視点と実行力

 

OMOは進化の途中? リアル店舗との融合が生む新たなEC課題

 

藤井:ここ数年、ECを中心としたコマース業界ではデジタルシフトが加速していると言われています。リアル店舗とECサイトとの融合を目指すOMOや、AI活用などのトピックが話題にあがっています。今回ここに集まったみなさんの業務でもその変化を感じていますか?

 

コマーステクノロジー事業本部 藤井 岳

 

掛川:はい。私の担当するCRMの領域では、紙媒体からWebへシフトする動きが顕著です。たとえば、今まで会報誌やダイレクトメールを活用していた企業が、顧客データを活用してWebマーケティングに力を入れるようになりました。また、AIを活用して個別の購入履歴に応じたレコメンドを行い、LINEなどでも配信するケースが増えていますね。従来の一斉配信から、より細かくターゲティングできるようになったのは大きな変化だと思います。また、販売物に同梱する紙媒体からの誘導先として、ECサイトそのものではなく、LINEのアカウントなどを指定することも増えています。こちらのほうが能動的な情報発信を行いやすいのですね。また、SMS(ショートメール)での情報提供も、その開封率の高さから注目されています。

 

トウメイ:AIの分野で言えば、ECサイトの構築・運用の面でも、AIレコメンド機能の活用が進んでいます。購入者の購買履歴や行動データをもとに、最適な商品をレコメンドすることで、購買体験がよりパーソナライズされるようになっています。たとえば、あるシューズメーカーのアプリでは、自分の履いているシューズのデータと連携し、一定の距離を走ると「そろそろ買い替え時」と通知してくれます。こうしたデジタルとリアルの連携が進んでいます。これらの仕様を実装することで、価格競争になりやすい大手ECサイトから、自社販売サイトへの誘導もできます。

 

河合:ファッション系ECサイトでよくあるのですが、ECサイトでの購入したものを店舗で裾上げして受け取ることができるサービスも、デジタルとリアルの融合であるOMOの良い事例ですよね。
しかし、一方で課題もあるのかなと思います。例えば、ECサイトで購入した商品に裾上げなど実店舗での対応が必要になる場合、実店舗での対応がスムーズでないと、顧客が待たされることもあり、そのことでサービスに不満を感じるケースもあります。OMO施策を成功させるためには、単にECと店舗を連携させるだけでなく、スムーズなオペレーション体制の構築や、在庫管理の最適化が重要だと思います。ですが、多くの企業ではまだ部門や管理ソフト上の顧客データが、相互活用できないというケースが起きているのが現状です。この課題解決のためのシステムの統合や、データ活用の高度化に向けた投資も求められているのだと感じます。また、昨今のコンプライアンス強化にも対応する必要はあるので、顧客データ活用を促進させながらも漏洩を防ぐための施策も求められています。

 

コマーステクノロジー事業本部 河合 夏音

 

また、OMO施策を展開する中で、物流の効率化も欠かせません。ECと実店舗の在庫管理が連携していないと、配送センターと店舗間での移動が増え、コストが上昇することもあります。昨今の配送料金の高騰の問題も大きいです。博報堂プロダクツでは、商品を配送するための梱包資材の選定や効率化までの提案も積極的に行っています。環境負荷を減らしサステナブルな資材を選びながらも、配送コストも削減する取組みを行っています。

 

藤井:OMOを実現するための課題が見えてきましたね。OMOを推し進めることで、お客様に効率的に商品の理解を深めていただける、ファンになっていただけるチャンネルが多くなっていきます。生活者にとっては、ECサイトで買っても実店舗で買っても購入体験価値は同じです。しかし、運用している企業側ではECと実店舗とで分断してしまっているのが多い状況です。対応する会社も、それぞれ異なっていたりと連携が難しかったりします。そこを一気通貫で、生活者の消費体験全体を同じ思いを持って作り上げることが必要なのかなと思います。

 

 

越境ECの注目の高まりと成功へのハードルとは

 

藤井:ECといえば、ECサイトを立ち上げることがまず思い浮かびますが、先程のOMOのお話と同様に、実店舗や配送、倉庫のバックヤードの課題も重要です。これらバックヤードの整備が必須なトレンドといえば最近注目を浴びている海外へのEC販売、いわゆる「越境EC」の現状と課題もとりあげておきたいです。

 

トウメイ:まず、言語や文化の違いが大きな障壁になります。特に、アジア圏と欧米圏では購買行動が異なり、現地の消費者に適したマーケティング手法が必要です。各国の関税や輸入規制も複雑で、とくに食品や化粧品などは規制が厳しく、販売のハードルが高くなります。

 

河合:決済システムの違いも大きな課題ですね。例えば、中国ではアリペイやウィーチャットペイが主流ですが、日本企業がこれらを導入するには、様々な規制やシステムの対応が必要になりますのでそこも大きな課題になりますね。

 

藤井:やはり、成功のハードルはなかなか高そうです。そのなかでも成功している企業はどのような対策を講じていますか?

 

河合:現地で支社をもっていたり、パートナー企業と協力し、物流やマーケティングを現地化している企業は成功している傾向があるのかなと思います。また、現地でのSNSマーケティングを強化し、ブランドの認知度を高めることも重要だと思いますね。

 

トウメイ:将来的にはAIによる需要予測や、自動翻訳技術の進化が進めば、越境ECの障壁は低くなると思います。また、ブロックチェーン技術を活用したトレーサビリティの確保も重要な要素になってくると感じています。

 

コマーステクノロジー事業本部 トウメイ 多葉咲

 

 

スモールスタートはもう無謀? 2025年EC新規参入の鍵を探る

 

藤井:今のEC業界の現状がいろいろ見えてきましたが、ここまでECサイトが求められる分野が広くなると、これから新規参入する企業にとっては、初期の投資額が莫大になってしまう可能性とかあると思うのですが、そのあたりいかがでしょうか?

 

トウメイ:ここ数年、簡単にECサイトを作成することができるプラットフォームを活用する企業が増えています。これにより、ゼロから構築するのではなく、既存のシステムを活かしながら効率的にECサイトを運営できるようになっているのでECサイトへの参入のハードルは低くなってきたよう感じます。ただその一方で作った後の集客を含めた運用に悩んでいる企業も多くあるように思います。我々もそういった相談もここ最近増えている実感値がありますね。

 

河合: 特に中小企業にとっては、ノーコード・ローコードのツールを活用することで、技術的な専門知識がなくてもECサイトを立ち上げることが可能になっています。これにより、スタートアップ企業でも迅速に市場へ参入することができるようになりました。そのため、ECサイト構築は既存のプラットフォームを活用して費用を抑えながら、バックヤードの計画や販売戦略に抑えた費用を投資していく体制を整えていくのが重要だと感じています。

 

 

EC成長の鍵は、多角的な視点と実行力

 

藤井:コマース領域、特にこれまで色々とテーマとして話してきたEC領域について、2025年にさらに成長が期待できる分野や、注目すべき施策にはどのようなものがあると感じていますか。

 

掛川:最近急速に伸びていて、導入もしやすい施策としては、デジタルギフトが挙げられます。従来の物理的なギフトカードに比べ、即時送信が可能で、利便性が高い点が特徴です。たとえば、有名コーヒーチェーンでは、LINEギフトを通じて友人や家族にドリンクチケットを簡単に送ることができるサービスを提供しています。EC販売から実店舗への誘導もできるわけです。

 

コマーステクノロジー事業本部 掛川 安祐

 

 

デジタルギフトは、単なる販促ツールではなく、ブランドのロイヤルティ向上にも役立ちます。たとえば、リピーター向けに特別なデジタルクーポンを配布することで、定期的な購入を促すことができます。また、SNSと連携することで、ユーザーがデジタルギフトを友人や家族とシェアしやすくなり、ブランドの認知度を自然に広げることができます。特に、LINEギフトのように気軽に贈ることのできる仕組みは、ファンの拡大につながります。

 

藤井:簡単にギフトと言っても、施策に落とし込むには、コミュニティのファン化だけでなく、AIの活用や実店舗との連携など、多角的な視点が求められますね。
今回、2025年のEC業界トレンドということで、さまざまな最新トピックに触れましたが、商材やクライアントの目的によって、最新技術をどのように導入して効果的な施策に落とし込むかが、これからさらに求められてくると考えています。
EC業界の急速な変化に対応するためには、多角的な視点と実行力が求められます。当社では、EC構築・運用からCRM、データ分析、デジタルマーケティング、物流戦略まで、幅広いソリューションを提供しています。特に、オンラインとオフラインを統合したユニファイドコマースの実現に向けて、全方位コマース事業支援ソリューションを展開し、クライアントの多様なニーズに応える体制を整えています。これにより、顧客一人ひとりに最適な購買体験を提供し、企業の成長とブランド価値の向上をサポートしてまいります。

 

 

【プロフィール(取材時)】

藤井 岳

コマーステクノロジー事業本部 本部長
2021年旧博報堂ダイレクトと博報堂プロダクツの統合により入社、主にEC・通販事業の事業戦略からメディア・CR制作・CRM・ECシステム・コールセンター・ロジスティクスに至るまでの通販事業全体のバリューチェーンの経験を活かし、クライアントの事業課題解決を担う。

 

掛川 安祐

コマーステクノロジー事業本部
2022年博報堂プロダクツ入社。主に化粧品、食品の通販においてリピート購入に繋げるためのターゲット設計、プランニング、クリエイティブ制作ディレクションを担当。ターゲットの消費傾向や心理変化の徹底理解に努め、効果的な施策を提案。

 

河合 夏音

コマーステクノロジー事業本部
2023年博報堂プロダクツ入社。主にECサイトのフルフィルメント構築と運用のディレクションを担当。また、博報堂プロダクツ内の内製センターの構築運用ディレクションも担当。CSと倉庫との連携を図り安全かつ迅速な運用が行えるようサポートを実施。

 

トウメイ 多葉咲

コマーステクノロジー事業本部
2023年に博報堂プロダクツに中途入社。主にECサイトの構築運用を担当し、クライアントの要望に応じた企画提案やスケジュール管理、チームマネジメントを行い、ユーザーが使いやすいECサイトの構築運用を担う。

 

 

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