総合制作事業会社である博報堂プロダクツは、17の事業本部にわたる幅広い領域でソリューションを提供しています。価値創造の中核を担うのは、116もの専門職を構成する2,000名以上の人材です。
博報堂プロダクツ 公式YouTubeチャンネルでは各職種の提供価値をお伝えすべく、「Close Up!P Value」を公開中。デジタル、リアル、映像、コマース、先端テクノロジーまで、多彩なプロフェッショナルたちの姿を紹介しています。そしてコーポレートサイトTOPICSでは、YouTubeで語られた内容をさらに深堀りするインタビュー記事を公開していきます。
Vol.15では、イベント・スペースプロモーション事業本部から藤野 絵名、松本 奎史郎が登場。大型イベントや展示会、ポップアップショップを手掛ける、エクスペリエンスプロデューサーの姿を紹介します。
細部への徹底が“特別”につながる
デジタル時代のイベント体験
――“体験”を接点にしたプロモーションで、ステークホルダーとのコミュニケーションを最大化するイベント領域。生活者向けのポップアップショップや街頭サンプリングから、プレス発表会、大型展示会まで、さまざまな形式のイベントを手掛ける専門集団が、イベント・スペースプロモーション事業本部だ。同事業本部の藤野は、企画、演出、運営の全プロセスをマネジメントし、プロジェクトを成功に導くエクスペリエンスプロデューサーの一人。社会全体のデジタル化が加速する中で、「リアル体験の位置付けも重要化している」と考えている。
藤野:商品の魅力を生活者に届ける上で、デジタル施策は欠かせない存在になりました。一方でコロナ禍が明け、実際に商品を手に取れるリアルイベントの重要性も見直されてきています。アプローチできる人数は限られますが、商品の魅力を実体験できる場を設けることで、ファンの獲得やSNSでの拡散など、+αの価値にも結びつけられます。魅力的なイベントに必要な要素を整えるのが、私たちエクスペリエンスプロデューサーの役割です。
――入社6年目の藤野は、特にZ世代向けの施策を得意とする。TikTokやInstagramとの連動、インフルエンサーの起用など、リアルとデジタルの融合が進むイベント領域では、ターゲットの心理や行動を踏まえた企画力が欠かせない。
藤野:同世代の情報発信には日頃からアンテナを張り、トレンドを施策に取り入れるように心掛けています。ただし、イベントの核はあくまでリアルな体験。例えば来場者が写真を撮ってSNSに公開する行動には、空間デザインや演出、接客などの“特別感”が根底にあります。博報堂プロダクツの強みは、クリエイティブやコンテンツ、テクノロジーの能力を備える各領域の専門家が属することです。これらを最大化できるよう、仲間と連携しながら、アウトプットのクオリティ向上に努めています。日本郵政さまのプロモーション施策「ズッキュン♡郵便局」は、チームの力を生かせた事例のひとつです。
――Z世代をターゲットにした「ズッキュン♡郵便局」は、大切な人への想いを手紙にしたためる喜びや、贈り物を送る楽しさを体感できる期間限定のイベント。普段は言えない想いを届ける「ドッキン♡ハートレター」などが話題を呼んでいる。
藤野:会場の随所にハートをモチーフにしたデザインを施しました。手紙や切手、ポストなどはもちろん、小さな備品や装飾品まで、社内のメンバーの技術とアイデアを結集し、細部の魅力を追求しています。イベントの開催中、私は現場に張り付いてお客さまの感想を聞いているのですが、「こんなところまでハートなんだ」「空間全体が統一されている」といった意見を聞くと本当に嬉しいです。
エクスペリエンスプロデューサー 藤野 絵名
――藤野のモットーは、現場に必ず足を運ぶこと。来場者の視点でイベントを分析することで、ノウハウを蓄積しているという。
藤野:イベントプロモーションでは、全体コンセプトや空間デザインに特に力が注がれます。しかしお客さまからすれば、目にする備品一つ一つも大切な体験。手は抜けません。現場で表情や反応に触れることで、ネガティブな要素も含め施策を客観視でき、クライアントへの提案やチームへのディレクションに生かせるんです。
――プライベートでもイベントに出かけるのが好きだという藤野。過去の原体験が仕事につながっていると、幼少期を振り返る。
藤野:父が昔、イベントの仕事に携わっていて、よくスタッフパスをつけて遊びにいっていたんです。「イベントって楽しい」「来ている人が楽しそう」という記憶が、今も根底にあるのかもしれません。その影響なのか、休日に遊びにいっても、デザインや動線、スタッフの所作ばかり気になってしまいます。お客さまの反応を自分ごととして感じられるからこそ、細部まで徹底してつくり込めるのかもしれません。
大型イベントで生かされる
空間設計の想像力
――二人目のエクスペリエンスプロデューサー・松本は、万博やモビリティショーなど大型案件にも関わっている。そこで必要になるスキルは、膨大なスタッフの意向をまとめ、プロジェクトを具現化する調整力だ。
松本:会場の設計と施工、音響や照明などの演出、当日運営スタッフとそれらを束ねるディレクターなど、大型イベントにはたくさんの人々が関わります。1つのイベントに携わる人数は、多いと100人を超えることも。各者の意向が入り乱れたり、ぶつかったりするのは当然で、総合的な視点から最適な判断を下すのが、私たちの役割。困難も多いですが、無事にイベントを終え、皆が顔を合わせる瞬間に、大きな達成感を得られます。
――松本は大学時代、建築を学んだ経歴を持つ。イベントという空間を設計や施工の観点から見られることは、大きな強みになっているという。
松本:例えば会場の図面やパースを見て、安全性や機能性を想像しながら空間設計を進めていきます。施工前の企画段階から多角的な視点を取り入れることは、実施時のクオリティにつながると考えています。
――松本が常に心掛けているのが、来場者視点だ。会場を訪れ、どのように行動し、何と出会うかを緻密に設計することで、ブランドや商材と人をつなぐ体験を形にしていく。
松本:ブースの配置一つとっても、楽しさ、期待感、デザイン性、利便性、動線、安全、コスト、施工スケジュールなど、多角的な視点で調整しなければなりません。サステナビリティが重視される昨今は、環境配慮やフードロスなどの視点を取り入れることもあります。判断材料が複雑になるほど調整も困難ですが、「イベントに来ていただいた方が、何を持ち帰れるか」「どのように態度が変化するか」を追求すれば、自ずと最適解は見えてきます。
エクスペリエンスプロデューサー 松本 奎史郎
――プロジェクトでは、博報堂プロダクツが持つ他領域の専門性も動員される。名古屋のオープンイノベーション拠点「STATION Ai」のオープンセレモニーでは、統合クリエイティブ事業本部の「ウラワザ」チームと連携し、先端テクノロジーを取り入れた来場者向けコンテンツを提供した。
松本:ウラワザは、デジタル領域に特化したインタラクティブな体験型プロモーションを手がける専門チーム。他のプロジェクトでも、テクニカルな領域でコンテンツを共に開発しています。社内でチームが完結するのは大きなアドバンテージ。一緒にクライアントの課題へダイレクトに向き合うことで、最善策に辿り着けます。
――エクスペリエンスプロデューサーのあるべき姿とは何か。松本は最適な現場に向けた想像力だと語る。
松本:人が集まり、心地よいと感じる空間には、必ず理由があるものです。例えば、商業施設のベンチに人が集まるのは、歩き回って疲れるからでしょう。イベントも同様で、心地よいと思う要因を一つ一つ積み上げていくことで、初めて魅力的な体験が生まれるんです。ただ、来場者にその場で体験を提供するエクスペリエンス領域において「後で改善」ということはできません。現場の着地まで責任を負うためには、企画段階から想像力を駆使する必要があります。立ち上がる空間を念頭に、専門スタッフの声に耳を傾けながら、総合的にプロデュースする。それがエクスペリエンスプロデューサーの使命です。
博報堂プロダクツ 公式YouTubeチャンネルでは、今回登場した二人のインタビュー紹介動画も公開しています。こちらもあわせてご覧ください!
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