子育ての経験を一つの貴重なスキルと捉え、親子関連事業のコミュニケーション開発を提供するクリエイティブユニット「ハハハクリエイティブ」。複数のママによる多角的な視点を生かし、親と子のインサイトに根ざした新たな価値を創造しています。後編では、ママとしての生活がもたらす働き方の変化や、ユニットが描く働き方の未来についてお話しします。
前半記事:
「ハハハクリエイティブ」ママクリエイターだからこそできる親子コミュニケーションデザイン
共感と協力で築く、ママクリエイターの働き方
―ハハハクリエイティブの立ち上げに繋がった、産休育休復帰後の体験談を聞かせていただけますか。
長瀬:ママになり、以前と同じようなスタイルでは働けなくなったことが一番のきっかけです。我が家の場合、子どもを18時にお迎えに行ったら、そこからはママ業が始まります。ここからは気合いでもやる気でも、時間はこじ開けられません。その時間を諦めるのではなく、受け入れなければならないと考えました。同じ悩みを持つママは多かったので、同じタイムテーブルで働くママ同士で集まったら、逆に仕事がしやすいのでは、という逆転の発想から生まれました。
―ハハハクリエイティブではどんな働き方を実践していますか
七尾:個ではなくユニットで業務を受けます。メンバー全員でブレストを行い、その後ディスカッションをしてアイデアを練ります。そこからプロジェクトを進める際は、決まった案の発案者がフロント担当者となり、全員で助け合いながら進行します。
藤原:ユニット内でフレキシブルな動きができることで、より多くの案件をこなせていると思います。子どもの急な発熱やお迎えにもお互いに助け合って対応できますし、メンバー全員が近い経験をしているため仲間がどんな状態にあるのか予測し合えるのも大きな強みです。
長瀬:働くコアタイムはありますが、育児のタイミングに応じて業務を進める時間を自由に選べるようにしています。例えば私は、朝5時から子供が起きる前までがゴールデンタイムです。また、このような働き方に理解を示してくださる上司や、協働するみなさんのおかげで、こうしてハハハクリエイティブは安心して活動できていると感じます。ご迷惑をおかけしていることも多々あると思うのですが・・・深い理解に感謝しています。
―お互いを信頼し合ってフレキシブルな働き方をされているのですね。
七尾:子育てには予測できない事態が常に伴うため、自分だけですべてを調整することが難しいこともあります。同じ境遇だからこそ、背景を一から説明しなくても理解し合える安心感があります。
―会社の制度で活用されているものを教えてください
長瀬:在宅勤務制度は、子育て中のママにとっても重要な制度だと思います。コロナ禍でリモートワークが整備され、テレカンが業界全体に定着したことが、ハハハクリエイティブに限らずママたちの活躍を支えています。限られた勤務時間の中で、本来なら通勤している時間を業務に充てられるのは、とても大きいです。多様な働き方を支援してくださる会社の方針にはありがたく思っています。
「ママだけど」を「ママだからこそ」の価値に変えていく
長瀬:前編でもお話ししましたが、ママになったことで、親子の深いインサイトをよりリアルに感じるようになりました。当事者としての意見を求められる機会も増え、毎日の実体験がクリエイターとしての新たな価値に繋がると感じたことが、ハハハクリエイティブ立ち上げのきっかけです。ママであることを、リスクではなく価値に変えていきたいなと考えました。
七尾:産休・育休に入る前は復帰後のイメージがつかめず、今携わっている仕事やキャリアをすべて手放してしまうのではないかと不安に感じていました。しかし実際に復帰してみると、新しい発見や学び、出会いがありました。クリエイティブディレクターとして新たなプロジェクトに取り組む機会も増え、第二の仕事人生が始まったと実感しています。
―ハハハクリエイティブを発足してから、どんな変化が生まれましたか
長瀬: ハハハクリエイティブは当初は事業本部内のユニットとして始めましたが、今では事業本部を越えた応援や声がけがあり、手がける案件の幅も件数も広がってきています。
さらには、ユニット内に留まらない取り組みも進行しています。MDビジネス事業本部のプロダクトデザインチームと月に一回、親子向けのオリジナル商品を開発する定例会議を開き、沢山のアイデアが生まれています。
七尾:社内だけでなく、子育てをされているクライアントのご担当者さまと意気投合することもあります。母の目線はあるけれど、それをどう商品やサービスの価値に転換できるのか。それこそが、私たちハハハクリエイティブの力を発揮する場面です。クライアントの考えや伝えたい思いを受け取り、インサイトを共有しながら、当事者の目線でコミュニケーション開発を行っています。
―ハハハクリエイティブを通じて、働き方の面でどんな取り組みを広げていきたいですか
長瀬: 子どもを生む前よりも、社会が良くなるためのことをしていきたいと考えるようになりました。私はアートディレクターであり、ママでもある。それによってできることがあると思うんです。それが何かは、考えていかねばなのですが。
七尾:子育てと仕事の両立に悩み一人で抱えてしまうママや、これからママになる人の助けにもなりたいです。
ハハハクリエイティブは、集まることで公私両面にわたり価値を発揮できると思っています。メンバーのお子さんが熱を出したときも、わかるわかる!とユニット内で共感できますし、子育てにまつわる相談ごとを一人で悩まずに、打ち合わせ中などにパッと相談できます。意外と日頃の悩みごとから新しいアイデアが生まれたりもしますしね。この輪をまずは自身のまわりから、そしてゆくゆくは博報堂プロダクツ全体に広げていきたいと思います。
長瀬: 仕事以外のことも気軽に相談でき、共感できる環境があることで、一人一人の心配ごとが少しずつでも解決していけるように。先輩ママたちがしてくれたことを、自分も実践していきたいと思います。
ー女性がもっと笑顔で働くために、どのような未来を目指していますか
七尾:みんな今の仕事が好きで、子育てを理由に自分のキャリアをあきらめることなく働きたい。そのためにはどうしたらいいかをみんなで考えるユニットです。ママと言っても、身の回りの環境も仕事内容も同じではありません。その人それぞれのペースを大切にしていきたいですね。
メンバーの子育て歴も様々で、先輩ママの話から「そんなことがあるんだ!」と気づくことも多いです。ハハハクリエイティブができたことで、先輩ママたちの経験や知恵が集まるコミュニティづくりに繋がればいいなと思います。
今すでにママである人はもちろん、これからママになるかもしれない人にとっても安心してキャリアを積める環境をつくることが、未来の働きやすさに繋がると考えています。
「働き方も働きがいもあきらめない」をすべての人に
藤原:私たちは、当事者として親子目線の取り組みに力を入れていますが、すべての人が今後直面し得る見えづらい事情にも目を向けることが大切だと思います。子どもを抱えるママパパ社員以外にも家族の介護や自身の体調不良といったそれぞれの事情もあるはずです。それぞれの状況にあわせて働ける環境をみんなで目指したいですね。
長瀬:ママだけでなく、パパ社員ももちろん育児と仕事のバランスを模索していると思います。また子どもがいるかどうかに関わらず、誰もが自分のプライベートを持っています。みんなが特別であり、自分らしい生き方を選ぶことができるようになれば素晴らしいですね。
現在、私たちはデザイナー、アートディレクター、コピーライターの6名が集まったユニットですが、デザインやコピーに限らず、領域をますます広げていきたいと思います。博報堂プロダクツが有する17の事業本部それぞれの専門性とシナジーを活かしながら、ハハハクリエイティブを中心にさらなる可能性を広げていきたいと思っています。
クリエイティブ業界におけるママクリエイターの新しい働き方を実現していくハハハクリエイティブの今後に、ぜひご期待ください。
プロフィール

- 長瀬 桃子
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2007年博報堂プロダクツ入社。ハハハクリエイティブのプロジェクトリーダー。5歳児の母。親子インサイトものはもちろんですが、女性たちをハッピーにするようなクリエイティブにも興味があります。

- 七尾 裕美
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2008年 博報堂プロダクツ入社。仕事復帰1年目・2歳児の母。子どもと接することで、40代半ばを過ぎてもなお新たな発見や、自分の引き出しが増えていくことに驚きとよろこびを感じる日々。日々是進化!

- 藤原 麻希子
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2014年博報堂プロダクツ入社。3歳児の母。難しいものをやさしく見せるデザインで、食品・流通・家電など生活に寄り添う企業を担当しています。