博報堂プロダクツでは2025年3月、子育てと仕事を両立するママによるクリエイティブユニット「ハハハクリエイティブ」の発足を発表しました。親子関連事業のコミュニケーション開発において、複数人のママによる多角的な視点がどのような強みを発揮するのか。実際の事例も交えながら、メンバーの統合クリエイティブ事業本部 長瀬 桃子、七尾 裕美、藤原 麻希子に聞きました。
- ママクリエイターユニット「ハハハクリエイティブ」とは
- 「N=1」の深いインサイトが価値になる
- 親子のコミュニケーションを生むデザイン事例
- 仲間を増やし、より広い領域で親子のコミュニケーション開発を手掛ける
- プロフィール
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ママクリエイターユニット「ハハハクリエイティブ」とは
長瀬:「ハハハクリエイティブ」は、統合クリエイティブ事業本部を中心とする、ママデザイナーとママコピーライターによるクリエイティブユニットです。当事者として親子インサイトに基づくコミュニケーション開発を手掛けています。育休中の方も含め、現在6人のメンバーがいます。
親子のリアルなインサイトをつかみ、子育てにハッピーな世の中をデザインする ママクリエイターユニット「ハハハクリエイティブ™」が始動!(プレスリリース)
長瀬:私はアートディレクターで、5歳の男の子のママです。休暇取得中のブランクによって担当から外れた仕事もありましたが、今となればたくさんの仲間と協力できる新たな体制づくりにつながりました。所属する統合クリエイティブ事業本部のなかでちょうど同じ時期に出産した仲間も多くいて、事業本部長が私のチームにママメンバーを集めてくれたことが、「ハハハクリエイティブ」立ち上げのきっかけのひとつとなり、2023年からこの取り組みを続けています。
藤原:私はデザイナーで、子どもは3歳の男の子です。保育園入園のタイミングもあり、産後5か月で仕事に復帰しました。すこし早いかなと悩みながらも思い切って復職したので、ママの先輩である長瀬さんの存在にとても救われました。
長瀬:自分もママになったことで初めて、復職までの期間は個人の希望で決められるものではなく、保育園などさまざまな事情があることを知りました。5か月での復職は、身体的なダメージも含めてかなり大変だったと思います。
七尾:私はクリエイティブディレクター/コピーライターで、2歳の息子がいます。復職は今年度の4月です。コピーライターチームとしては初めてのママということもあり、先輩ママ社員からのアドバイスを得ながら、働き方や一日の時間の使い方を模索中です。
「N=1」の深いインサイトが価値になる
長瀬:ハハハクリエイティブの一番の提供価値は、メンバー一人ひとりが子育てについての深いインサイトを持っていて、それを融合することで、多角的で多くの子育て世代に刺さる提案ができること。そしてそれを、親子や子育てをする人たちに届くように、クリエイティブとしてアウトプットできることです。メンバー6人の中でも、子どもの年齢や性別、性格も違いますし、家族の協力体制など状況はさまざまです。その分意見の幅が広く、共感することもあれば、複数の視点があるからこそ新たな気付きが得られることも多いんです。
七尾:出産前にも子育て関連の案件を担当したことがあり、当時は調査結果やユーザーボイスを参考に、自分なりにターゲットの気持ちを想像して取り組みました。今振り返ると、ママになってその商品を使ってみないと分からないこと、今だからこそ実感を持って言えることが本当にたくさんあるんですよね。
藤原:これまでは「私個人の意見だし…」とアイデアを引っ込めてしまうこともあったのですが、ハハハクリエイティブの案件では「それそれ!」と共感や賛同を得られることも多く、個人の意見を営業もクライアントもよく聞いてくださいます。「N=1」の意見が必要とされることに手応えを感じています。
長瀬:また、リアルな子どもの姿が分かるのもハハハクリエイティブの強みです。提案をするときは、メンバーの経験や子どもの反応を合わせてお伝えするようにしています。
七尾:子どもの実態や感覚に即しているのか、子どもに受け入れてもらえるのか、ターゲットに近いお子さんがいるメンバーに聞いて確かめることもありますね。大人たち目線であれこれ考えていたことが、子どものリアルな声や反応で解決することも多いんです。
長瀬:保護者としての視点も重要です。私たち自身も子どもの肌につけるものや口に入るものを選ぶ時には、成分表示まで自分のもの以上によく確認するようになりました。子育て世代の心を捉え、どんな情報やデザインがあれば心を動かせるのか、親子を笑顔にできるのかを大切にしています。
親子のコミュニケーションを生むデザイン事例
長瀬:ハハハクリエイティブが手掛けた案件のひとつが、日産自動車とアカチャンホンポがコラボしたおしりふきです。限定の外箱と商品パッケージのデザインを手がけました。
長瀬:この外箱のデザインは、2つの視点から生まれました。
ひとつは、部屋の空間に馴染むこと。おしりふきは日々使うものですし、箱買いすれば安いのですが、大きいので収納できずに箱のまま部屋に置かれる可能性がある。そのため赤ちゃんのいる空間にマッチしつつ、大人目線でインテリアとしても素敵であることをめざしました。
もうひとつは子どもと楽しめること。日産自動車のモデルのセレナやルークスを探して楽しめるのはもちろん、赤ちゃんとの双方向のコミュニケーションが発生するデザインをめざしました。それぞれのモチーフを、電車と信号機、線路とはしご、などのように2つ以上の解釈ができるようなあいまいな形にして、会話が生まれることを想定しています。
藤原:子どもと楽しめる自由な形のデザイン、という方針にはすぐにメンバー全員が合意しました。子どもが小さい時期に抽象的な形や言葉の絵本を楽しんでいた共通の経験があったんです。実際、ハハハクリエイティブのアートディレクター 内藤さんのお子さんに「これは何に見える?」と絵を見せると予想外の答えが返ってきたというエピソードがあり、それをご提案時にお話しました。
七尾:さらに、ターゲットにマッチするAR身長計の企画・開発もご提案しました(現在はサービス終了)。おしりふきを赤ちゃんの頭の上においてスマートフォンでARフィルターを起動すると身長計があらわれ、その画面を誰かに共有したくなる、というものです。
七尾:2024年11月23日(いいニッサンの日)に全国のアカチャンホンポで一斉発売し、多くの子育てに関わるお客様に喜んでいただいています。購入者がSNSに商品の写真やお子さんが喜んでいる様子を投稿してくれているのも嬉しいですね。
仲間を増やし、より広い領域で親子のコミュニケーション開発を手掛ける
長瀬:統合クリエイティブ事業本部の中だけでなく、他事業本部との取り組みも始まっています。例えば商品やノベルティの企画から製造まで担うMDビジネス事業本部 プロダクトデザインチームのメンバーと、「親子×ウェルビーイング」をテーマに、親と子が笑顔になれるプロダクトやコトを開発するプロジェクトを進めています。
長瀬:今後も社内でさらに仲間を増やして領域を拡大していきたいです。小売・メーカーのクライアントはもちろん、自治体や保育・教育機関など、子どもに関わる分野に広く携わっていきたいです。
藤原:イベント・スペースプロモーション事業本部と連携し、イベントやワークショップなど、子どもと直接関われるような仕事をしてみたいです。
子育てを通じて、自分の経験を世の中に還元していきたいという思いが生まれました。保育園に入れないなど育児の中で困ったことも、過ぎ去ればどんどん忘れていってしまいます。今まさに感じている感情や体験を大切に、子育て中の困りごとの改善や解決につなげられるようなアクションをしていきたいと思っています。
七尾:ハハハクリエイティブに加わり、このユニットだからこそできることがある、と強く感じています。仲間がいる心強さを知ることができたので、育児に関わるすべての人やこれから子どもを持つことを考えている人と、支え合えるコミュニティづくりを、社内外でしていきたいです。
長瀬:ママや育児のまわりの分野であれば、自分にも社会の役に立てるかもしれないと感じられるようになったことが、大きなやりがいにつながっています。ハハハクリエイティブのメンバーが大変ながらも育児と仕事を両立している大きな理由は、自分たちの仕事が好きだから。働ける時間など制約もありますが、その分自分たちの経験を価値に変えてクライアント、そして子育てを頑張る人たちに還元していけるよう、これからも私たちだからできることを模索していきます。
プロフィール

- 長瀬 桃子
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2007年博報堂プロダクツ入社。ハハハクリエイティブのプロジェクトリーダー。5歳児の母。親子インサイトものはもちろんですが、女性たちをハッピーにするようなクリエイティブにも興味があります。

- 七尾 裕美
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2008年 博報堂プロダクツ入社。仕事復帰1年目・2歳児の母。子どもと接することで、40代半ばを過ぎてもなお新たな発見や、自分の引き出しが増えていくことに驚きとよろこびを感じる日々。日々是進化!

- 藤原 麻希子
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2014年博報堂プロダクツ入社。3歳児の母。難しいものをやさしく見せるデザインで、食品・流通・家電など生活に寄り添う企業を担当しています。