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博報堂プロダクツの各コア事業が追求している専門技術を駆使した新しい取り組み、
最新ソリューションおよびプロフェッショナル人材などを紹介します。

企業らしさと社会をつなぐ、持続可能な未来へ一歩踏み出すアップサイクル実例

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アップサイクルとは、不要になったものを資源として新たな価値を見出し再活用することで、持続可能な社会の実現に寄与する取り組みです。しかし、「何をどう始めたらいいのか分からない」と感じている方も多いのではないでしょうか。この記事では、博報堂プロダクツのモノづくり領域を担う インセンティブプロモーション事業本部の3名が、アップサイクルの基本やポイント、総合制作事業会社が取り組むアップサイクルの実例を詳しくご紹介します。

 

【目次】

■どう集めて何をつくるか、自社のスキーム構築が課題に

■「何をつくるか」を通じて「何を伝えるか」

■アップサイクルの実施スキームと注意ポイント

■アップサイクルを通じて未来の当たり前をつくる

ーアップサイクル関連出演・出展情報

 

 どう集めて何をつくるか、自社のスキーム構築が課題に

 

―アップサイクルの実装において、企業が直面する課題にはどのようなものがあるでしょうか。

 

村田:現在、再生プラスチックや再生繊維などのリサイクル素材を使用した製品の取り扱いに加え、店頭に回収ボックスを設置し、使用済み製品の回収やアップサイクルに積極的に取り組む企業が増えてきています。

 

しかし一方で、廃棄物を有効活用したい思いはあるものの、どこから手をつけたら良いかわからないという課題をお持ちのクライアントもいらっしゃいます。当社にも「廃棄物を自社内で有効活用・循環させたい」という相談が増えており「現在は廃棄物処理会社に委託して処理を行っているが、自社内でスキームを構築しアップサイクルに取り組みたい」という要望が多く寄せられています。

 

「何ができるのか」という相談から始まり、「こんな廃棄物や端材、滞留在庫があるが何ができるか」という具体的な問い合わせも増えています。さらに、「どう回収していけばよいか」といったお問い合わせも増加傾向です。分別基準の細分化や自治体ごとの異なる回収ルールを遵守しながらアップサイクルを実現するための、社内スキーム構築に関するサポートが求められています。

 

―アップサイクルはどんな廃棄物が活用され、どんなものが生み出されているのでしょうか。

 

村田:生産時に発生する端材や不良品、施設運営で発生する食品残渣や使用済みペットボトル、物流倉庫の使用済みパレットなど、そのままの状態では使用が難しいものを活用します。具体的な素材としては、プラスチック、金属、ガラスなどがあります。

 

例えばペットボトルのアップサイクルというと、多くの方が同じプラスチック製品へのアップサイクルをイメージされるかもしれませんが、実際にはペレット化(粒状化)してシート・フイルム、さらには糸に変え、生地を作ることもできます。食品残渣についても、アルコールや印刷インクに生まれ変わらせたり、野菜や果物の皮を使って製品を染めたりすることもできます。さらに、自然由来の素材と混ぜ合わせることで、想像以上に幅広いアイテムに生まれ変わらせることが可能です。

 

アップサイクルから生まれるアイテム名

アップサイクルの方法は1つじゃない

 

伊藤:当社の強みの一つは、アップサイクル製品の企画・開発における多様な引き出しを持っていることです。手掛けた事例をご紹介します。

 

アクリルパーテーションから防災ヘルメットへ

伊藤:三井不動産株式会社様の関東大震災から100年の節目の年の取り組みとして、オフィスで使用していたアクリルパーテーションを原料に、防災用のヘルメットを製作しました。役目を終えたアクリルパーテーションを何に生まれ変わらせるか関係者で協議の上、同じく「従業員の方の安全のためのアイテム」に生まれ変わらせようというコンセプトのもとで実現したアップサイクルです。

産業用ヘルメットは、厚生労働省による労働安全衛生法に基づく規格に適合する必要があります。アップサイクル基準に照合しながら同規格の検定試験をクリアし、回収から生産に至るスキーム開発と実装を担当しました。

 

アクリルパーテーションをアップサイクルしたヘルメット

 

蕎麦殻を箸へ

伊藤:へぎそばで有名な小嶋屋総本店様の創業100周年の記念品として、製粉時に出る蕎麦殻の有効活用という発想から、バイオマスレジン箸の開発に挑戦しました。品質を保つための最適な配合を模索し、あえて着色をせず蕎麦殻の自然な模様を活かすことで、一般的なプラスチック製の箸とは一線を画す風合いを実現しています。

安全面にも徹底的にこだわり、これまで食品でしか前例のなかった蕎麦アレルギーの試験をプロダクトでも実施できるよう、独自の試験法を検査機関と共同開発しました。これにより、蕎麦アレルギーの方でも安心して使用できる箸を提供しました。

 

蕎麦殻を使ったバイオマスレジン箸



 

インセンティブプロモーション事業本部 プロデューサー伊藤 恒昭

インセンティブプロモーション事業本部 プロデューサー 伊藤 恒昭

 

 

「何をつくるか」を通じて「何を伝えるか」

―アップサイクルの実装において大切にしていることはなんでしょうか。

 

木寺:命を吹き込むような視点で、誰にどんなメッセージを伝えるかを大切にしています。

 

①企業らしさ

アップサイクルは単なるアイテムの製造ではなく、企業や商品・サービスの特性に紐づけることが重要です。

現在、アップサイクルについてのご相談は製造部や物流部門など、製品製造や廃棄に近い部署から多く寄せられていますが、企業ブランディングやPRにもつながるストーリーを設計することで、広報やCSR部門も統括した会社全体の取り組みとして広げることができます。なぜこの取り組みを自社で行うのか、そのストーリーを一貫させることで、事業内容や商材に沿った取り組みとなり、社内理解にもつながります。

 

②社会トレンド

アップサイクルを「つくって終わり」の取り組みにしないために、世の中のトレンドに目を向け、生活者がそのアイテムを取り入れ参加したくなる仕組みづくりを行います。アイテム自体の魅力はもちろん、認知させ体験してもらうPRやプロモーション設計が鍵を握ります。

 

博報堂プロダクツが提供するアップサイクルの展開例


各専門性を有する18の事業本部の連携による
店頭施策やイベント実施、Web告知など関連施策を通じて、効果を最大化していく

 

木寺:全体のストーリーとコミュニケーション設計を同時に行うことで、社内外にともに取り組むパートナーシップが増えていきます。製品や企業スローガンに合うアーティストとのコラボレーションなど、さまざまな人を巻き込み、社会をワンチームにすることで、インパクトを広げ生活者を巻き込む活動に繋がります。

当社がプロデュースを手掛けたコスギグリルマーケットでは、利用者が飲食時にアップサイクル製品を使用でき、ごみの分別までともに行うことで、行動や体験を通じて循環型社会を広げる仕組みづくりを実現しています。

 

インセンティブプロモーション事業本部 プロデューサー木寺 夏子

インセンティブプロモーション事業本部 プロデューサー 木寺 夏子

 

③ フィジビリティ

さらに、予算や安全性、法令遵守などをクリアしたフィジビリティ(実現可能性)が基盤となることで、アップサイクルが持続的なコミュニケーションにも寄与することができます。

 

こうした「企業らしさ」「社会トレンド」「フィジビリティ」の3つの要素が重なるポイントで施策を実施することで、企業・社会・環境の各方面にとって意味のあるアップサイクルが実現できると考えています。

 

「企業らしさ」「社会トレンド」「実現可能性」の3つが重なるポイントを表した図

 

 

アップサイクルの実施スキームと注意ポイント


―アップサイクルの一連の流れを教えてください。

村田:不要になったものを資源として有効活用するためのスキーム構築に取り組む際には、いくつかのステップが重要です。まず、ご依頼品の種類と量を正確に把握し、それに基づいてどのようなアップサイクルが可能かを検討します。次に、回収方法や分別基準を明確にし、従業員への教育や啓発活動を行います。さらに、運送会社、分別・再資源化事業者 、製造工場と連携し、国や自治体の法規制を遵守しながら効率的な回収・処理・再生体制を整えます。

 

アップサイクルの実施スキーム

 

当社では実際にクライアントの資源集積所に同行し、回収の状況や状態を確認します。回収品に付着した汚れや状態がその後の再生・生産過程に影響することを踏まえ、現場を見ながら分別や回収方法の改善に繋がるアドバイスをすることもあります。その後、回収物の状態と量、生産効率を加味した上でアップサイクルアイテムの企画を行います。

 

―アップサイクルの実装にあたり注意するポイントを教えてください。

村田:国や自治体ごとの法令や規制を把握し、回収方法を設計することが重要です。回収自体はシンプルですが、指定品目や指定業種に関する法令や規制、都道府県をまたいでの運搬が禁止されている場合や、保管の場所や方法など、様々なルールを遵守したうえでの運用が必要です。所在地や地方自治体によってチェックポイントが異なる場合もあるため、都度確認しながら進めていきます。

 

回収・生産過程で大きな環境負荷をかけたり、働く人々の労働環境に問題がある場合、その取り組みはアップサイクルとは言えません。サプライチェーン(原材料の調達、製造、流通、販売、配送まで、製品やサービスが生産者から生活者に届くまでの一連の流れ)の管理や製品の品質管理まで、博報堂プロダクツでは独自のガイドラインを設定し、チェックリストと照合しながら持続的なものづくりを続けています。

 

インセンティブプロモーション事業本部 品質保証部 村田 聡一

インセンティブプロモーション事業本部 品質保証部 村田 聡一

 

 

博報堂プロダクツの調達基準



 

アップサイクルを通じて未来の当たり前をつくる

 

アップサイクルが実現する未来について、どんなビジョンを持っていますか。

伊藤:現在、多くのクライアントが「アップサイクルの取り組みを広げたいが、テストレベルで終わってしまっている」という課題を抱えています。まずは取り組みの入口から始めてもらうことが重要ですが、一過性の取り組みで終わらせず、持続的に続けられる仕組みづくりが当社の役割だと考えています。

 

アップサイクルの取り組みは、回収と廃棄等のスキームが縦割りになりがちで、私たちはそれを繋げる役割を担っています。企業の垣根を越えた業界全体の取り組みは増えつつありますが、生活者も巻き込んで意識改革を進めることが重要です。生活者が興味を持ち、自ら参加したくなるような仕組みを提供することで、持続可能な循環型社会の実現に繋がると信じています。さまざまな企業がアップサイクルを当たり前に実践できるようにし、SDGsやアップサイクルを「未来の当たり前」にしていきたいと考えています。

 

伊藤、木寺、村田の集合写真

 

 

 

アップサイクル関連出演・出展情報

今回ご紹介した博報堂プロダクツのサステナブルな取り組みをご覧いただけます。

 

「宣伝会議サミット2024(冬)」

日時:2024年11月20日(水)15:00~ オンライン開催

セミナータイトル:

第一部「サステナブル経営をどう”生活者価値”に変換するか 」

第二部「クリエイティブ視点で活性化させる、企業のサステナブルアクション 」

第三部「販促・マーケティングにおけるサステナブル調達を実践するポイント 」

※インセンティブプロモーション事業本部 村田が登壇いたします

第四部「生活者体験もサステナブルが当たり前に 」

公式サイト:https://www.event-forum.jp/sendenkaigi/summit-online/

 

「エコプロ 2024」

日時:2024年12月4日(水)~6日(金)

会場:東京ビッグサイト(東ホール)

出展ゾーン:SXゾーン/イベント推進ゾーン

公式サイト:https://messe.nikkei.co.jp/ep/

 

詳細プログラム・入場お申し込み等は公式サイトをご覧ください。

 

 

【プロフィール】

村田 聡一

インセンティブプロモーション事業本部 品質保証部 部長

プラスチック雑貨メーカーで企画営業・生産管理を経て、2007年株式会社博報堂プロダクツ入社。自動車メーカー・生命保険・飲料メーカー・ファストフード等の得意先を担当。現在、製造品のリスクアセスメント、サンプル評価、CSRチェック、ユーザー問い合わせや不具合の解析等の業務に従事。

 

伊藤 恒昭

インセンティブプロモーション事業本部 プロデュース部 プロデューサー

印刷会社を経て、2001年 博報堂インセンティブプロモーションズ、2005年 博報堂プロダクツ入社。

プロモーションプロデューサーとして、企画から制作実施までのプロデュース業務を担い、飲料・食品・自動車・保険等のクライアント業務、及びコンテンツ事業に従事。現在、事業本部のSDGsプロジェクトに参画し、サプライチェーンのサステナビリティ推進に取り組んでいる。

 

木寺 夏子

インセンティブプロモーション事業本部 プロデュース部 プロデューサー

2019年入社。プレミアム領域におけるキャンペーン設計からプレゼント景品の企画製造調達までをプロデューサーとして管理。

外食チェーン、化粧品、住宅メーカー等多岐に渡るクライアント業務に従事。ものづくりの現場における環境、人権、倫理面のサステナブルなサプライチェーン実現にむけ、本部SDGsプロジェクトに参画し様々なソリューション構築に携わる。

 

 

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