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博報堂プロダクツの各コア事業が追求している専門技術を駆使した新しい取り組み、
最新ソリューションおよびプロフェッショナル人材などを紹介します。

食と農の新しい循環を生み出す「はくほうファーム」農作業体験レポート

気候変動や原油価格高騰、高齢化による耕作放棄地の問題が深刻化しています。そんな中、毎日私たちが食べている一杯のお米は、田植えから収穫まで様々な人の手を介して、長い年月をかけて届けられています。そういったしくみを知り、食と農業を身近に感じる機会として、2023年10月20日〜21日に山梨県北杜市の「はくほうファーム」で開催された農作業体験に当社社員が参加しました。お米を育てて食べるまでの全プロセスを余すところなく活用する地域循環型農業について、NPOえがおつなげて代表の曽根原氏にお話を伺いました。また、食と農の新しい循環を生み出す当社のアップサイクルの取り組みについて、現地体験レポートと合わせてご紹介します。

 

 

2011年12月、山梨県北杜市にある耕作放棄地を開墾するところからスタートした「はくほうファーム」は、博報堂・博報堂DYメディアパートナーズの社員が農業作業を通じて、タテ・ヨコ・ナナメの関係づくりを促進する取り組みです。コロナ禍を経て、今年は、博報堂グループ連携強化とサステナビリティをビジネスに活かすきっかけづくりを目的に農作業体験が再開され、当社もサステナビリティ活動の一環として参画しました。今回、体験させていただいた農作業は、お米のライフサイクルの中でも一大イベントである「稲刈り」です。NPOの方々が農薬や化学肥料を使用しない有機農法で心を込めて育ててくださったお米の収穫がどのように行われたのか、参加者の声も交えてご紹介します。

 

<はくほうファームの一年>

12月~3月 精米後の米ぬかを発酵菌で温室ハウスで発酵させる

2月 土壌検査

3月 発酵した米ぬか、発酵鶏糞、苦土石灰(ドロマイトを原料とする天然資材)を、土壌検査をもとにはくほうファームに散布する

4月上旬 種もみの塩水選、温湯消毒、浸種

4月中旬 種もみの播種(温室ハウス内)

4月中旬~5月下旬 稲の育苗(温室ハウス)

5月下旬~6月上旬 代掻き、田植え

6月上旬~7月末 水田の除草

5月下旬~10月中旬 水田の水見、土手草刈り、鳥獣害・いもち病等の観察および対処

9月下旬~10月下旬 稲刈り

10月下旬~11月 乾燥、脱穀、精米

 

食物連鎖による循環を感じる農作業体験

 

天候にも恵まれ、澄み渡った空の下に広がる黄金の田んぼがとても眩しく輝いていました。NPOえがおつなげて代表の曽根原さんのご挨拶冒頭「農作業は重労働です!」ということで、まずは、ラジオ体操から。NPOスタッフの方々から、稲刈り、稲束づくり、稲架(はさ)掛けのやり方を教えていただきながら早速、農作業をスタートしました。

 

 

稲刈り:切れ味鋭いカマを持ち、稲の根本から刈っていきます。ザクザクという音が気持ちよく響き、みんな真剣に作業に没頭しました。かなりハイペースで進行し、汗をかきながら60分弱で全ての稲刈りが完了!その後、お昼休憩では、地元の方の手作り弁当を田んぼでいただきました。稲刈りをした後に食べるお米の味は格別です。

 


稲束づくり:刈った稲の根本から20cmくらいの場所で固く結ぶ、地道な稲束づくりの作業をおよそ45分間。この稲一束で、ようやくお米2〜3合程度になるそうで、農家の方々の大変さが身に沁みました。チームを組んで流れ作業にしたほうが効率的に進められるのではないかと分析したメンバーからの提案で周囲が動いたり、バラバラになってしまった落穂拾いをしながら全体のバランスをとるメンバーもいたりと、地道な作業にこそ人柄が現れていました。自然と連携しながら「丁寧」で「効率的」に作業を進めるための創意工夫をする博報堂グループ社員の姿が、とても印象的でした。

 

 

稲架(はさ)掛け:束ねた稲を棒に架けて1〜2週間、天日干しにして乾燥させることで、お米の水分量を調整します。大規模農家ではコンバインを使用して一気に作業を進めますが、はくほうファームでは昔ながらの手作業で行います。杭を交差させて田んぼに差し込み、稲束を3:7に分けて、互い違いに傘のようにして干していく作業は、とっても楽しい!2人ペアになっての作業で会話も弾みました。

 

 

有機農法で育てている「はくほうファーム」は、食物連鎖による豊かな生態系を育んでいます。稲3株のまわりにおたまじゃくしが35匹ほど生息し、その周辺にはイモリも暮らしています。標高1000m以上の高地に位置しているため、害虫も少なく、水もきれいで、有機農法を継続してきたからこそ栄養豊富な土壌にも恵まれ、農薬や化学肥料を使わなくても安心安全でおいしいお米をつくることができるそうです。収穫当日も、赤トンボ、カニ、カエルなどたくさんの生き物を見かけ、生命の循環を感じとることができました。しかし、今年の猛暑で、標高が低いエリアに位置する田んぼでは一部不作があったとか。お米の生産と自然環境保全をいかに両立するかという視点においても、気候変動は私たちの食に直結する問題だと改めて実感しました。

 

 

アップサイクルなものづくりで生み出す新しい循環

 

無事収穫作業を終えて、汗を流した後、日本百名山のひとつである「みずがき山」を望む宿泊施設に到着。NPO法人えがおつなげて代表の曽根原さんに、日本の耕作放棄地の現状や開墾にまつわる活動についてお話を伺い、当社プレミアム事業本部メンバーからは、お米を起点とした循環型ソリューションを通じて、社会課題をいかに私たちの業務の中で解決していくかという視点を共有しました。
今回収穫したお米を脱穀(だっこく)する時に出る「籾殻」は、FSC認証紙としてアップサイクルされて博報堂プロダクツオリジナルノートに生まれ変わる予定です。また、精米する時に出る「米ぬか」は、微生物発酵で肥料にしてから田んぼに戻すことで、来年育つお米の栄養として生かされていきます。こうして、お米を育てて食べるまで全てのプロセスを余すところなく活用し、捨てられるはずの廃棄物をデザインやアイディアの力で生まれ変わらせることが、食と農の新しい循環を生み出す取り組みにつながっていくのです。

 

 

<NPOえがおつなげて代表の曽根原久司さんからのコメント>

私自身も都会から田舎に移住して経験しましたが、都会の暮らしではなかなか経験できない自分たちの食べ物を作る経験によって、大地や自然とつながる自分を感じるようになりました。もちろん、心のリフレッシュ効果もとても強く感じましたが、自分自身のエネルギーも上がったように思います。そんなことを経験したみなさんにも感じてもらえたら、うれしいです。

 

 

食と農をつなぐ社員食堂で新米「はくほう米」提供

 

今回収穫したお米の一部、約300kg(お茶碗3900杯分)は、乾燥、脱穀、籾すり、精米の工程を経て、豊洲本社の社員食堂「5615」に届けられました。土壌のミネラルや乳酸菌などの発酵菌が豊かな滋味深い味わいが特徴の新米「はくほう米」。その素材を生かして、サステナブル料理家 佐々木綾子さんが考案したオリジナルメニューのランチと共に社員に提供されました。

 

毎日食べているお米がどこから来て、どのように作られ、どんな人たちが関わっているのかを知ることは、食と農の持続可能性を考えることであり、生物多様性が私たちの暮らしと密接に関わりあっていることへの気づきにもつながります。博報堂プロダクツは今後も、食と農をつなぐ体験によるサステナビリティアクションを推進し、アップサイクルなものづくりを通して、新しい循環を生み出す取り組みに挑戦していきます。