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博報堂プロダクツの取り組みから考える「サステナビリティコミュニケーション」 ―後編:サステナビリティサイトの制作・実装における6つのポイント―

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博報堂プロダクツでは、自社のサステナビリティへの取り組みを社内外に発信するため、2023年4月にサステナビリティサイトを公開。前半の記事では、サイトの企画、制作に携わった統合クリエイティブ事業本部、デジタルプロモーション事業本部、動画ビジネスデザイン室の5名の社員が、今企業が抱えているサステナブル領域における課題と必要な視点について紹介しました。後半では、クリエイティブ制作やサイト実装をより魅力的かつ効果的にするためのポイントについてご紹介します。

 

<目次>

ポイント1:サステナブル領域のプロジェクトは多様なメンバー構成で行う

ポイント2:自社の志やストーリーからなるステートメントで共有認識を持つ

ポイント3:わかりづらいテーマを、誰にでもわかりやすく伝えるためのクリエイティブ開発

ポイント4:多様な人への配慮と尊重をカタチにする

ポイント5:新しいイシューに柔軟対応し、何度も訪れたくなるようなサイトの仕組みを作る

ポイント6:一人ひとりの行動を促す「体験の場」を作る

 

 

 

ポイント1:サステナブル領域のプロジェクトは多様なメンバー構成で行う  

 

――今回のスペシャルサイトの制作では、プロジェクト発足からクリエイティブチームとサイトチームが一緒に参加していたんですよね。その点も、プロジェクトを進める上で大切なポイントだったのでしょうか?

 

竹山:はい、垣根を越えたチームで進められた点は大きかったですね。ワンチームではじめから参加してもらい、さまざまな視点で情報交換をしながら進められたので、クリエイティビティを強みにした最適なUI/UXデザインが実現できました。やはり、さまざまな視点が混ざり合った方が、よいものができる気がします。サステナブルがテーマですから、チームに多様なメンバーがいたことも心強かったです。 

 


統合クリエイティブ事業本部 梅澤チーム 竹山 まり子

   

 

 

 

ポイント2:自社の志やストーリーからなるステートメントで共有認識を持つ  

 

――サステナブル・コミュニケーションの構築において、何から着手したらいいかわからない企業も多いと思います。今回のサステナビリティサイトの制作では、何から取り掛かりましたか?  

 

竹山:私たちの場合、はじめに情報収集からはじめました。広報チームが、ESG(Environment:環境、Social:社会、Governance:企業統治)のフレームで、それぞれの事業本部がどんなことやっているかを事前に収集・集計をしてくれていました。その情報を分類して、再編集することからはじめました。広報チームとの連携が取れていたことが、スムーズにスタートできた大きなポイントだったと思いますね。  

ESGの一般的なフレームに、ものづくり企業である「博報堂プロダクツらしさ」を出すために「P(Products)」を加えた「P+ESG」を活動フレームとして策定しました。一番大切な中核、つまり「ものづくり」の部分を独立させました。誰が見ても私たちの最大の強み、独自性、そして本質が伝わるように、フレームづくりからこだわったポイントです。  

 

 

 

 

――共感性を高めるためにステートメントづくりで工夫した点はどこでしょう?  

 

竹山:企業理念にある「こしらえる」という言葉は、社員全員が身近に感じる言葉なので、「私たちがいつもやっていることをサステナブルにしていけばいい」という、とてもシンプルなステートメントを作りました。最初の段階で社長の意図を汲んだ軸がしっかりあったからこそ、プロジェクトメンバーもそれを指針としながら、サイトを作り上げることができました。  

 

サイトと同時に制作した動画も、ステートメントをそのままムービーにしたイメージです。やはりまず、進むべき方向性を言葉にしてみること。それから、腹落ちするまで話し合い示しことが、ぶれずに進められるポイントですね。

   

 

 

 

ポイント3:わかりづらいテーマを、誰にでもわかりやすく伝えるためのクリエイティブ開発  

 

――今回のサステナブル・コミュニケーションサイトの制作において、クリエイティブで意識した部分はどこでしょうか?  

 

日髙:最初の段階ではいくつかのデザイン案があり、もう少し尖った、今っぽい、簡単に言うと若者向けのデザインも考えました。ただ、「柔らかい表現で、誰に対しても心を開いている感じ」という社長のイメージがあったので、最終的にはそれらを反映させたデザインを採用しました。今思えば、尖った案だとターゲットを固定して発信をしていると受け取られかねませんし、サステナビリティ領域では「誰に対しても」を意識することが大切だなと改めて思いました。  

 

サイトは動画BDの徳永さんのイラストがメインですが、柔らかいトンマナを意識しながらも、幼稚な印象にならないように「企業としての誠実さ」が、しっかりと伝わる色味の検証を重ねました。藤岡さんにイラストの「動き」をつけてもらって、サイトを訪れた方が楽しみながら、このサイトをもっと見てみたいと思ってもらえるような仕組みを取り入れました。  

 


統合クリエイティブ事業本部 日髙チーム 日髙 李衣子

   

藤岡:イラストがかわいかったので、デフォルメし過ぎると、日髙さんが言ったように、幼稚に見えてしまうかもしれないと思い、人のリアルな動きを意識しました。走っているイラストは、自分が実際に同じ動きをして撮影した動画素材をベースに、動きをつけました。リラックスする動きも、実際に自分でリラックスしてみて、どう体が動くかを見ながら、イラストひとつひとつに命を吹き込んでいきました。

 

 

 

 

 

ポイント4:多様な人への配慮と尊重をカタチにする  

 

――サイトを実装していくうえでは、どのような点を意識しましたか?  

 

髙井:今回は「サステナビリティ」がテーマだったので、Webアクセシビリティを意識して制作しました。例えば、デザインだったらコントラスト比、文字の級数。HTMLの部分では、「音声読み上げ対応」などがあります。サイトを訪れる方のなかには、目が不自由な方もいらっしゃいます。その方たちに対して、代替テキストで「この画像はどんなものなのか」を情報として入れておくことで、音声読み上げの際に画像情報まできちんとお伝えすることができます。このように実装においては、どんな方にでも平等に情報を伝えることが大切だと思っています。  

 

これは今回のサステナビリティサイトだけでなく、すべてのサイトに共通していることですが、設計でのポイントは「誰に対して・どんな体験を提供して・何を持ち帰ってもらうか」です。今回の自社のサステナビリティで言うと、障がいを持っている方や妊婦さんなど、あらゆる人たちにきちんと博報堂プロダクツらしさである「P(Products))+ESG」をしっかりと伝えて、理解してもらい、共感を得ること。そのうえで、最終的に「博報堂プロダクツは、P+ESGで掲げているサステナビリティに力を入れている企業なんだ」という印象を持って帰ってもらうことが大切だと考えました。  

 

――動画制作においても、多様性を意識しなければいけない点がありそうですね。  

 

藤岡:そうですね、はじめに竹山さんから「ステートメント動画は、無音で視聴しても内容がわかるように」とアドバイスをもらいました。音が聞こえない方にもしっかりと「自分たちが何を考えているか」を伝えるという意味で、そういった視点はとても大切だなと改めて感じました。通常業務で制作する動画では、セリフやナレーションの全てを字幕として入れてしまうことも多いですが、今回のステートメント動画ではイラストの世界観と融合させた「映像のエッセンスの一部」として字幕を使っています。  

 


動画ビジネスデザイン室 マルチクリエイション部 藤岡チーム 藤岡 晃維

 

藤岡:また、グローバル企業の場合、「人種のバランスも意識して構成してください」と言われることも少なくありません。フッテージ(素材)を感覚的に選んでいくだけでは、人種が偏ってしまうことがあります。映像としては、「良いもの」のものさしが変わってしている点について、ディレクターとして難しさを感じる部分であり、やりがいでもあります。多様な人への配慮と尊重は、今後すべての企業のサステナブル・コミュニケーションにおいて欠かせないポイントになってくると思います。

 

 

 

ポイント5:新しいイシューに柔軟対応し、何度も訪れたくなるようなサイトの仕組みを作る  

 

――今回のサステナビリティサイトでCMSを実装した意図は何でしょう。

 

髙井:サイトにおける情報の更新を容易にするためです。更新に手間がかかることで更新が見えなくなると再度訪問された方々に対して新しい情報を訴求できないため、どうしても離脱する可能性が上がってしまいます。「変わっていない」と感じさせず、まずはサイトに訪れる楽しみを持っていただきたいと思いました。「こんな記事が上がっているんだ、面白い」と思ってもらうことで、サイトを基点に継続的コミュニケーションをとることができます。また、サステナビリティのイシューは日々更新されているため、そういった動向を捉えて、企業としても新しい活用を常に発信し続けることが大切だと考えています。 

 


デジタルプロモーション事業本部 オウンド戦略プロデュースチーム 髙井 新平

 

 

 

 

ポイント6:一人ひとりの行動を促す「体験の場」を作る

 

――最後に、みなさんがこれからサステナブル領域で挑戦してみたいことについて教えてください。  

 

千葉:私は今、クライアントからのサステナビリティ案件を3〜4つほど担当しています。そのなかで、実際に社会貢献活動などに参加させてもらう機会があり、サステナビリティがより身近に感じられました。まだ社内にも「サステナビリティって何だろう?」と感じている方も多いと思うので、「自分ごと化」してもらうためにも、まずは社内イベントなど、リアルに感じられる機会を増やしていきたいです。  

 


デジタルプロモーション事業本部 オウンド戦略プロデュースチーム 千葉 彩夏

 

髙井:やはりまだ「サステナビリティ」という言葉が、現場で実務を担当されている方々に定着していないと感じる部分があります。だからこそ、自然と日々の生活に取り入れられるようにしていきたいですね。私の実体験でもありますが、はじめは興味がなくても、実際に触れてみると、自然と意識するようになります。興味がない方に対しては、「一緒に巻き込んでいく」こと、「ちょっと一緒にやってみようよ」と声をかけてみること。そうした行動の連鎖を広げていくことが大切だと思います。  

 

藤岡:僕は「教育の機会」の提供として、自分の持っているスキルをシェアしたいですね。僕自身、自分で映像のディレクションと編集をしています。映像を制作する上で、どのような考え方が必要か、どういった演出がよいかなど、生活者の方にシェアする塾を開くのもいいですね。博報堂プロダクツを知ってもらうきっかけにもなりますし、他にもいろいろな広がりが生まれるのではないかと思っています。  

 

日髙:私がサステナビリティに興味を持ったのは、「洋服」がきっかけでした。6年前に、エシカルファッションブランドのイベントポスターを作ったことがあり、「サステナビリティという考えは、今後広がっていくだろうな」と興味を持ちました。現業では大手クライアントがメインになっていますが、小規模でも志を持って取り組んでいるブランドと一緒に、歩幅を合わせて作っていく大切さも感じています。  

 

竹山:私は今、クリエイティブボランティアの取り組みとして老舗の和菓子屋さんと一緒に商品開発しています。「もっと若い人たちにも和菓子を楽しんでほしい」という課題に対し、コピーライターが新しいコンセプトとネーミングを先に考え、それに合った商品を作ってもらう、逆の発想で取り組みを進めています。そういう小さな優良企業が今後も残っていくために、いいところを生かして未来につなぐものづくりの新しいあり方を、私たちが一緒に作っていく。今後は、このようなお仕事にたくさん携わっていきたいですね。

 

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【プロフィール】

 

 

竹山 まり子 CD/コピーライター
統合クリエイティブ事業本部 梅澤チーム

2003年、博報堂プロダクツの前身である博報堂フォトクリエイティブに入社。コスメ、食品、流通などの女性向け商品・サービスから、B to Bの工業製品まで幅広い業種を担当。企業スローガン、ステートメント開発、新事業・新商品のコンセプト立案、ネーミングなど、ブランド構築から関わり、最終的なアウトプットまでトータルに手掛ける。

サステナビリティ関連業務実績:
・大手デベロッパー:サステナビリティ活動をテーマにした新聞広告
・大手フィナンシャルグループ:日本の工芸文化(意識・技術)の継承をサポートするプロジェクトに参加(ステートメント等)
・大手製紙会社:女性の更年期による体と心の変化に向き合うブランドのステートメント、CM、パッケージ開発等

 

日髙 李衣子 AD/デザイナー
統合クリエイティブ事業本部 日髙チーム

2012年、博報堂プロダクツ新卒入社。ブランドビジュアルやパッケージ制作、ロゴ制作など、ブランドのアートディレクション・デザインを幅広く担当。SDGs案件、ファッション系や女性向けの商材に精通。個人的にエシカルファッションに関する活動も行っている。

 

藤岡 晃維  ディレクター/モーションデザイナー
動画ビジネスデザイン室 マルチクリエイション部 藤岡チーム

2013年、博報堂プロダクツ新卒入社。映像クリエイティブ事業本部でプロダクションマネージャー6年間、ディレクターを1年間経験して動画ビジネスデザイン室へ。演出だけではなく、自らモーション・編集を行うスタイルでさまざまな業務に携わりキャラクターからタイポまで幅広いジャンルのモーションに精通。

 

髙井 新平  Webプロデューサー
デジタルプロモーション事業本部 オウンド戦略プロデュースチーム

2017年、博報堂プロダクツ入社。Web制作におけるプロデュース業務を主に担当。特にWebインテグレーション、Webマーケティングにおける戦略設計、オウンドメディア起点のコミュニケーション戦略立案やプロジェクト推進を得意とする。自動車・不動産・IT・家電・PC・通信事業・金融・流通・保険・運輸・石油など幅広い業種を担当。近年は特にB to B領域のWebマーケティング案件を多く手掛ける。

サステナビリティ関連業務実績:
・大手エネルギー会社:CSR環境サイトローンチ&運用 

 

千葉 彩夏  Webプロデューサー
デジタルプロモーション事業本部 オウンド戦略プロデュースチーム

2018年、博報堂プロダクツ入社。CSR、環境、エネルギー会社、自動車 、小売、飲料から省庁・自治体まで幅広い業種を担当。オウンドサイトやキャンペーンサイトの企画から設計・実装・運用・改善までを手掛ける。

サステナビリティ関連業務実績:
・大手エネルギー会社:CSR環境サイトローンチ&運用 
・大手電気機器グループ:CSRブランドスペシャルサイトローンチ&運用にてWebアクセシビリティ(AA)対応