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博報堂プロダクツの取り組みから考える「サステナビリティコミュニケーション」 ―前編:サステナブル領域で企業が抱える課題と必要な4つの視点―

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SDGsの普及とともに「サステナビリティ」への意識が高まっています。その一方で、企業活動においてどのようにサステナビリティへと向き合い、いかに発信すべきかについて、頭を悩ませる企業も少なくありません。2023年4月、博報堂プロダクツでは自社のサステナビリティへの取り組みを社内外に発信する、サステナビリティサイトを公開しました。これは、全てのステークホルダーへ自社の取り組みを伝える「サステナブル・コミュニケーション」の実現を目指すものです。このコミュニケーション設計からサイト制作に携わった統合クリエイティブ事業本部、デジタルプロモーション事業本部、動画ビジネスデザイン室の5名の社員に、サステナブル・コミュニケーションにおいて必要な考え方や視点、意識すべきポイントについて話を聞きました。

前半では、サステナビリティ領域において企業が抱える課題とコミュニケーションに欠かせない4つの視点について、後編では実際のクリエイティブ制作からサイト実装における具体的なポイントについて紹介します。

 

<目次>

視点1:社会課題と企業価値を結んだ成長ストーリーを描き伝える

視点2:多様なステークホルダーとのコミュニケーションを意識する

視点3:トレードオフを理解し、ポジティブ・ネガティブの両面から問題を捉える

視点4:参加したくなる仕掛けや体験を通じたコミュニケーションの実践する

 

 

 

視点1:社会課題と企業価値を結んだ成長ストーリーを描き伝える

 

――サステナビリティ推進において、企業はどのような点に課題を感じているでしょうか?

 

髙井:「サステナビリティ」という言葉が使われはじめて7〜8年が経ち、サステナビリティの大切さが企業に定着してきて、本気で向き合ってきているように思います。

 


デジタルプロモーション事業本部 オウンド戦略プロデュースチーム 髙井 新平

 

髙井:その反面、言葉が「独り歩き」しているような感覚があることも否めません。サステナビリティは、とても抽象度の高い言葉。私たちのクライアントのなかには、「会社がサステナビリティ方針を打ち出しているから何かしなくては」との意識はあっても、なかなか具体的な行動ができていないケースが多い印象です。  

ただ、そうなるのは仕方がない部分もあります。各企業に合ったサステナビリティ方針やビジョンに対して、きちんと目標設定をして成長ストーリーを描かなければ、何をしていいかわからなくなるからです。企業の資源や技術を鑑みながら、社会課題と企業価値を結びつけた成長ストーリーを設計する際に、私たちも一緒に考えられたらいいのかなと、個人的には感じますね。  

 

藤岡:私は動画制作でクライアントと携わっていますが、同じようなお悩みをよく聞きます。実際、私たちが一緒に具体的な目標や行動を考えることも多いですね。あとは、「意思統一の難しさ」。上層部と現場に温度差があることも多いですから、いかに両者が一体となって取り組めるかが、重要なのではないかと感じます。

 

動画ビジネスデザイン室 マルチクリエイション部 藤岡チーム 藤岡 晃維

 

 

 

視点2:多様なステークホルダーとのコミュニケーションを意識する  

 

――複雑化するサステナビリティ課題に対し、どのように対処していけば良いのでしょうか。  

 

日髙: やはり、サステナビリティは「本質」ですから、「流行っているから取り組む」という姿勢が見えてしまうと、企業にとってマイナスイメージにも繋がりかねないと思うんです。私たちもそうでしたが、強い意思を持って本気で取り組むことが大切な視点だと感じます。

 

竹山:私の実感としては、利益を還元するCSRのようなところから、「本業をサステナビリティ化していく方向」へ、どんどん進んでいるイメージです。その分、課題が複雑に、そして高度化している部分もあります。

 

行動だけでなく本質が伴っているかは、サステナブルへの取り組みにおいて難しい部分の一つです。ブランドらしい、独自性のあるアクションに繋げている企業がある一方で、「今までやっていたことをSDGsに当てはめただけ」というケースもあるようです。  

 


統合クリエイティブ事業本部 梅澤チーム 竹山 まり子

   

竹山:サステナブル・コミュニケーションを構築していくことは、私たちが日頃から取り組んでいる業務と、アプローチの仕方は変わらないと思うんです。だからこそ、私たちが一緒にクライアントの課題とその先にある社会課題について、一緒に考えていく。弊社の仕事としても、今後はそのように最初の段階から携わっていくような依頼が、さらに増えてくるのではないかと思っています。  

 

――サステナブル・コミュニケーションにおける課題についてはどうでしょうか?   

 

千葉:コーポレートサイトにてサステナビリティとどう向き合っているかを、企業はまだ十分に発信しきれていない印象です。最近は、就活生が「企業のSDGsへの取り組み」を企業選定軸で重視しているデータも出ていることから、自社での取り組みを、サイト内から関連資料をPDFでダウンロードできるようにしている企業はありますが、物足りない印象です。サステナビリティサイトを基点としたコミュニケーションが、今後スタンダードになっていく兆しを感じています。今回私たちが制作したサイトのように、社内外へと自社の取り組みを発信ができれば、継続的にステークホルダーと円滑にコミュニケーションを取っていけるのではないかと考えています。

 

デジタルプロモーション事業本部 オウンド戦略プロデュースチーム 千葉 彩夏

 

 

 

視点3:トレードオフを理解し、ポジティブ・ネガティブの両面から問題を捉える  

 

――実態が伴わない取り組みを意味する「SDGsウォッシュ」という言葉もよく聞かれるようになりましたが、企業がサステナブル・コミュニケーションを行ううえで、意識すべきことは何だと思いますか?  

 

竹山さん:企業にとっては、「トレードオフ」を理解することが大切だと感じます。どうしても一方を尊重すると他方に犠牲やしわ寄せがいってしまうケースも発生してしまうからです。この構造を理解していないと、炎上してしまう可能性もあります。  

 

だからこそ、「トレードオフを認識したうえで発信をするスタンス」が欠かせないポイントです。どちら側の観点も課題として捉えて誠実なスタンスを守る。隠さなければ炎上しないということはよくあります。風力発電の例で言えば、環境団体と事前に話をして、一緒に考えていくことも重要ですね。環境課題に詳しい専門家に発信する表現やステートメントを確認してもらうなど、きめ細かな目配りが必要です。あらかじめ多様な視点を持っていれば、もし問題が起きたとしても誠実に対処できると思います。  

 

 

 

視点4:参加したくなる仕掛けや体験を通じたコミュニケーションの実践する  

 

――多くの企業やそこで働く方にとって、サステナビリティを「自分ごと」として捉え、行動するのは、難しい部分もあると思います。今回のサイト制作を通じて、これからサステナビリティコミュニケーションに取り組む企業の参考となるような考え方、向き合い方はありましたか?  

 

日髙:例えば「働き方」を考えることも、サステナビリティの一環だと思います。コロナ禍を機に在宅勤務が浸透しましたが、それ以前だってやろうと思えばできたんですよね、きっと。「一人ひとりに合わせた働き方」を軸に、「自分にとってよりよい働き方って何だろう?」と考えることも、何か行動をするきっかけになると思っています。「大きなことを成し遂げなきゃ」というよりは、もう少し身近なところから入っていくイメージですね。それが自分ごと化するうえでの大きなポイントだと感じます。  

 

統合クリエイティブ事業本部 日髙チーム 日髙 李衣子

   

竹山:私は、サステナビリティという言葉、概念をあまり難しく考えないように意識しています。日々やっていることにちょっとプラスしてみるとか、ちょっと視点を変えるとか、今あるものをベースに工夫することが、第一歩かなと思っていますね。「やらなきゃ」ではなく、「やりたいことをサステナブルしていく」と、ちょっと意識を変換してみるだけで、楽しみながら実行できますし、アウトプットに対しても、大変だったけどクライアントと一緒にやりたいことができたと実感を得ることができます。  

 

博報堂プロダクツには「顧客化力」というコアコンピタンスがあるのですが、それはまさに「人を動かす力」なんです。そのためにはまず、人の心を動かし、共感してもらうこと。この力は、サステナビリティに関しても生かしていくべきです。日本は世界に比べるとまだまだ遅れている部分も多いので、まさに生活者の参加したくなる仕掛けや体験を通じたコミュニケーションが求められていると思っています。  

 

後編へ続く    

 

 

 

 

 

 

【プロフィール】

 

 

竹山 まり子 CD/コピーライター
統合クリエイティブ事業本部 梅澤チーム

2003年、博報堂プロダクツの前身である博報堂フォトクリエイティブに入社。コスメ、食品、流通などの女性向け商品・サービスから、B to Bの工業製品まで幅広い業種を担当。企業スローガン、ステートメント開発、新事業・新商品のコンセプト立案、ネーミングなど、ブランド構築から関わり、最終的なアウトプットまでトータルに手掛ける。

サステナビリティ関連業務実績:
・大手デベロッパー:サステナビリティ活動をテーマにした新聞広告
・大手フィナンシャルグループ:日本の工芸文化(意識・技術)の継承をサポートするプロジェクトに参加(ステートメント等)
・大手製紙会社:女性の更年期による体と心の変化に向き合うブランドのステートメント、CM、パッケージ開発等

 

日髙 李衣子 AD/デザイナー
統合クリエイティブ事業本部 日髙チーム

2012年、博報堂プロダクツ新卒入社。ブランドビジュアルやパッケージ制作、ロゴ制作など、ブランドのアートディレクション・デザインを幅広く担当。SDGs案件、ファッション系や女性向けの商材に精通。個人的にエシカルファッションに関する活動も行っている。

 

藤岡 晃維  ディレクター/モーションデザイナー
動画ビジネスデザイン室 マルチクリエイション部 藤岡チーム

2013年、博報堂プロダクツ新卒入社。映像クリエイティブ事業本部でプロダクションマネージャー6年間、ディレクターを1年間経験して動画ビジネスデザイン室へ。演出だけではなく、自らモーション・編集を行うスタイルでさまざまな業務に携わりキャラクターからタイポまで幅広いジャンルのモーションに精通。

 

髙井 新平  Webプロデューサー
デジタルプロモーション事業本部 オウンド戦略プロデュースチーム

2017年、博報堂プロダクツ入社。Web制作におけるプロデュース業務を主に担当。特にWebインテグレーション、Webマーケティングにおける戦略設計、オウンドメディア起点のコミュニケーション戦略立案やプロジェクト推進を得意とする。自動車・不動産・IT・家電・PC・通信事業・金融・流通・保険・運輸・石油など幅広い業種を担当。近年は特にB to B領域のWebマーケティング案件を多く手掛ける。

サステナビリティ関連業務実績:
・大手エネルギー会社:CSR環境サイトローンチ&運用 

 

千葉 彩夏  Webプロデューサー
デジタルプロモーション事業本部 オウンド戦略プロデュースチーム

2018年、博報堂プロダクツ入社。CSR、環境、エネルギー会社、自動車 、小売、飲料から省庁・自治体まで幅広い業種を担当。オウンドサイトやキャンペーンサイトの企画から設計・実装・運用・改善までを手掛ける。

サステナビリティ関連業務実績:
・大手エネルギー会社:CSR環境サイトローンチ&運用 
・大手電気機器グループ:CSRブランドスペシャルサイトローンチ&運用にてWebアクセシビリティ(AA)対応