総合制作事業会社である博報堂プロダクツは、18の事業本部にわたる幅広い領域でソリューションを提供しています。価値創造の中核を担うのは、90以上の専門職を構成する2,000名以上の人材です。
博報堂プロダクツ 公式YouTubeチャンネルでは各職種の提供価値をお伝えすべく、「Close Up!P Value」を公開中。デジタル、リアル、映像、コマース、先端テクノロジーまで、多彩なプロフェッショナルたちの姿を紹介していきます。そしてコーポレートサイトTOPICSでは、YouTubeで語られた内容をさらに深堀りするインタビュー記事を公開していきます。
Vol.1では、クリエイティブディレクターの諸橋 裕子、有冨 悠が登場。企画・制作の中軸を担うクリエイティブディレクターたちは、いかにして多角的な施策を統括するのか。プロジェクトを指揮する二人の姿を紹介します。
根底にあるブランド哲学を言語化し
チャーミングなクリエイティブに変換することで共感を生む
――多岐にわたるタッチポイントでプロモーションを展開するためには、クリエイティブワーク全体の統括者が必要となる。顧客課題を解決するコンセプト開発から各施策の企画・実行まで、プロジェクトをまとめ上げるのがクリエイティブディレクターだ。その一人、諸橋裕子は、自身の仕事を「左脳から右脳への橋渡し」と例える。
諸橋:クライアントのビジネスゴールを達成するために、足りない要素は何か。まずは課題を洗い出し、最もプライオリティが高い部分を抽出し言語化。そして最善の解決策を考え、ファクトを基に何をターゲットに伝えていくべきかのコアアイデアを策定します。ここまでは徹底したロジックが必要です。一方でアウトプットに落とし込むためには、受け取る側が感覚的に腹落ちするようなクリエイティブである必要があります。論理から感性へ。その橋渡しをすることが、私の役割です。
――諸橋の経歴は独特だ。新卒入社の広告プロダクションからファッション業界へ転職し、グラフィックデザイナーとしてキャリアを形成。さらにアメリカへと渡ってアート系の学校に通い、Webデザインの仕事をしながらスキルアップ。帰国後に入社したのが博報堂プロダクツで、アートディレクターからクリエイティブディレクターへと、活動領域を広げてきた。
諸橋:デザイナーだった頃から、まずは絵よりも言葉でイメージを描くタイプでした。アイデアが膨らみすぎた時、文章にすると整理できるんです。この思考プロセスは、クリエイティブディレクターになった今も有効です。デザイナーとクリエイティブを作る上で、理由を言語化できない表現は、極力排除するようにしています。
――明晰な言語に置き換える力は、クライアントとのコミュニケーションでも生かされ、共通認識を確実にする。諸橋が企画段階で心掛けているのは、課題の本質を探ることだ。
諸橋:オリエンでクライアントが課題を言語化できるとは限りません。背後にある根本課題を理解したいので、リサーチやヒアリングは何度も繰り返します。そしてアプローチすべきポイントがわかったら、一枚のシートに簡潔な言葉で集約します。そうすることで、全ての関係者が共通認識を持って、プロジェクトを進めることができます。
――諸橋は現在、某鉄鋼業の企業の担当している。これまでファッションやビューティーを中心に幅広い案件を手掛けていたが、全く異なる領域で新たな挑戦の最中だ。広告以外の業界も経験したことが、アイデアの幅をもたらしている。
諸橋:コアメッセージの訴求のため、余計なものは削ぎ落とします。しかしそれだけでは共感が生まれません。見る側が感覚的に理解できるように、クリエイティブ自体に“チャーミング”さを与えるんです。
――論理と感覚をシームレスに統合し、ユニークなプロモーションを展開する諸橋。担当するプロジェクトでめざすのは、クライアントの根底にあるブランド哲学を大切にし、世の中に伝えることだ。
諸橋:ファッション業界の場合、確固たる思想がブランド力に直結します。一方で多くの業界に目を向けると、全ての企業が明確なアイデンティティを打ち出しているわけではありません。それでも必ず、脈々と受け継がれてきたDNAや社会に対する想いなど、企業の根底には“らしさ”が存在する。大事なのはその独自の”らしさ”を大切にし、この領域での先駆者になっていくという意志を表現に込めることです。
――どのような企業にもブランド哲学を見つけ出す思考は、ファッション業界で磨かれたのかもしれない。諸橋自身は博報堂プロダクツに、どのようなアイデンティティを感じるのだろうか。
諸橋:個性的な人材が共存するエコシステムでしょうか。『コピー系』『アート系』と、クリエイティブディレクターには枕詞が付きものですが、特に博報堂プロダクツのクリエイターは、経歴そのものが多彩です。それぞれの出自が、良くも悪くも“アイデンティティ”に変わり、いつの間にか得意領域を超えてくる。クライアントの課題も千差万別ですが、必ずマッチするクリエイティブディレクターが見つかるはずです。ぜひ相談していただきたいですね。
設計と表現の往復を重ね
統合プロモーションの最適解を見つける
――二人目のクリエイティブディレクター・有冨悠は、その役割を「設計と表現」に分けて語る。
有冨:クライアントが抱える課題に対し、大きな方向性を見つけ最適解へと目指していくための“設計”。その設計をドライブさせるために突き詰めるのが“表現”です。生活者とのタッチポイントは爆発的に広がり、多くの案件で各事業本部や協力機関からチームが編成され、時にはたくさんのスタッフが動員されます。設計と表現がうまくブリッジしていないと、有効な施策にならないことも多く、みんなの頑張りの無駄も増える。設計と表現を行き来しながら統合プロモーションの核を見つけていくことが、クリエイティブディレクターの一番の役割だと考えています。
――そのスキルは、経験の中で培われた。コピーライターとしてキャリアをスタートした有冨は、商品プロモーションを中心に、いかに店頭や現場で買ってもらえるか、わかりやすいか、動いてもらえるかといった視点で言葉を鍛えてきた。その後コピーライターでありながらプランナー領域の経験を多く積む中で、「コピーを書く」だけでなく、生活者へ届けるために「ストーリーを描く」ことの重要性に気づく。クリエイティブディレクターとしての役割が増えた今も意識していることだ。
有冨:統合クリエイティブで重要なのは、枝分かれした媒体でも機能する、展開力のあるメッセージです。コピーライターとしての言葉をつくる力と、プランナーとして届け方を考える力。どちらを欠いても、自分の良さは生かせません。だから、やることは多いです。手を動かして、汗水かいて。自分でそうしないと見えてこない解があると思っているので。
――複眼的な視点をもつ有冨の企画力は、SNSと切っても切り離せない近年のプロモーションでも発揮される。担当した案件でも、ポップアップイベントや交通媒体を起点としながら多くのプロジェクトで話題化に成功。KPIを凌駕する結果によって、クライアントの要求を超えてきた。
有冨:誰もがスマホを見て、タイムラインに常接してしまっている時代に、広告をつくって満足していてはきっとダメで。発信したくなる仕掛けを何個も仕掛けたり、愛されるだけの余白を用意したり、とびっきりチャーミングにしたり。あの手この手と諦めずに考え続ければ、勝率は上げられると信じています。
――心を動かす企画や表現を生む源泉とは何か。有冨はどのようなマインドで、日々の仕事にあたっているのだろうか。
有冨:時には設計に縛られず、表現の面白さから全体を考え、後からそれぞれのピースをはめる“逆上がり”的な発想もします。若手時代に日夜コピーを捻り出す中で身についた、さまざまな可能性を探るマインドも役立っているかと。可能性を探るために時には寄り道しながら、意外性のある組み合わせやいいバグを見つけながら、アイデアをつくっています。広告のクリエイターは広告ばかり勉強してしまうと、他人の真似事になってしまう怖さがあると思います。自分なりの発見や味を大事にしながら、これからも仕事をしていきたいです。
博報堂プロダクツ 公式YouTubeチャンネルでは、今回登場した二人のインタビュー紹介動画も公開しています。こちらもあわせてご覧ください!
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