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次世代とともに“新しい居場所”を発想する 高校生向け探究学習プログラム「Hasso Camp Projectミライ」に密着−前編−

博報堂DYグループの社会貢献活動である高校生向け探究学習プログラム「Hasso Camp Projectミライ」。博報堂プロダクツからもメンターとして、プロモーションプロデュース事業本部の大原美弥子、MDビジネス事業本部の橋本千里が参加しました。今年のテーマは「Ibasho(居場所)」。高校生たちと、正解のない問いに「生活者発想」と「クリエイティビティ」で向き合い続けた3日間の様子をレポートします。今回はday1、day2のレポート(前編)をお届けします。(後編の記事はこちら

 

左から、橋本千里(MDビジネス事業本部)、大原美弥子(プロモーションプロデュース事業本部)
 
 目次 

Day1 居場所とは何か?視野を広げる3つのプログラム

- 「居場所観」を深堀り、構成要素を考える

- データで読み解く「新しい居場所」へのヒント

- 一人ひとりの視点を深める発想法とフィールドワーク

Day2 居場所づくりを知る こども食堂へのフィールドワーク

 


 Day1 居場所とは何か?視野を広げる3つのプログラム 

―イントロダクション―

夏季休暇期間に行われた本プログラムに、高校生23名、博報堂DYグループ社員12名が集合しました。まずは自己紹介とチーム名を決めてアイスブレイクです。

自己紹介の様子。レゴを用いたジェスチャーゲームも行われました。

その後イントロダクションとして、博報堂ストラテジックプランニング局の今井郁弥さんより、アイデア発想のポイントやテーマの説明・3日間のスケジュールのお話がありました。

 

「Hasso Camp Projectミライ」は、社会的課題の探究を通じて、正解のない問いへの未知なる答えを導き出す「発想力」を育むプログラムです。今回のテーマは「Ibasho(居場所)」。近年、授業や交流のオンライン化が進み便利になった一方でつながりが希薄になっていたり、各地でたびたび発生する災害において地域や関係者のレジリエンス(回復力)への注目が高まっていたりする中、「居場所」の重要性が再認識されています。そんな背景を受けて、高校生にとって「ちょうどいいつながりを保てる新しい居場所」を考えるというプログラムになっています。

 

アイデア発想のポイントとして、いきなり正解にたどり着こうとせず、様々な視点を持ち寄ってあえて課題から視点を拡散させ、そのアイデアを組み合わせることで普通では考えつかなかったアイデアを思いつくことがポイントと語ります。


 「居場所観」を深堀り、構成要素を考える 

―「居場所観」の整理―

早速グループワークに入ります。
それぞれポストイットに、自分にとってどこが居場所か、またどうしてその場所を居場所と感じるかを書き出し、ホワイトボードに似たものをグルーピングしながらポストイットを貼っていきます。

 


自宅や学校といった身近な場所から、友人と行くサウナやドライブといった人とのつながりが感じられる場所、またオンラインゲームやSNSといった今ならではのオンライン上の場所まで様々な意見が飛び出しました。


―居場所とは何か。なぜ必要か。ー

認定NPO法人全国こども食堂支援センター・むすびえ 理事長である湯浅誠氏より、インプットセッションがありました。

 

初めに「僕自身も正解がわかっているわけではないので、皆さんの若い知恵を貸してほしい」という前置きがあった上で、湯浅氏が考える居場所とは、“誰かにちゃんと見てもらえている、受け止められている、尊重されている、つながっている”と感じられるような関係性のある場のことを指すのではないかと話します。

居場所の数が多いと感じている人の方が自己肯定感や社会性が高まることや、どこにも居場所がないと感じる人も増えているという調査結果もあり、“居場所はどんな人にでも、よりたくさんあること”がポイントということです。

さらに居場所を考えていくための手掛かりとしては2つあり、ひとつは“つながりたいけれどしがらみも嫌”という時代にその中間のつながり方を考えること、もうひとつは“居場所とはDOING(=がんばったから認められる)よりBEING(=いるだけで認められる)と親和性が高く”、お互いのバランスをとることが大事と語ります。

 


その後高校生による感想共有が始まりました。

「自分から居場所をつくりにいくのではなく、いつの間にか居場所になっているのがよいのでは」「居場所は“場所”とつくので物理的な場所と思いがちだけれども、ペットとかSNSとか場所以外も居場所になると聞いて新しい発見だった」「居場所の数が多すぎても、居場所ごとに違う自分がいるので、疲れてしまう人もいるのでは」などの感想が出ており、湯浅氏も若い視点ならではの意見として驚いていた一幕もありました。




 データで読み解く「新しい居場所」へのヒント 

―生活者にとっての居場所とはー

生活者にとっての居場所をデータで見てみるというテーマでのインプットです。
読売広告社のストラテジックプランナー藤田剛士さん、コミュニケーションデザイナーの秦瞬一郎さんからのお話です。

 

 

居場所とは、自分が安心できる場所や人との関係を指し、年代や性別によって異なる特徴がありました。多くの人が自宅を居場所と感じていますが、居場所が多いほど幸福度が高い傾向があり、自宅以外の居場所を持つことが重要とされています。居場所に求める感情としては、若年層と高齢層で特に「ワタシとアナタ」「ワタシとミンナ」の感情を求める傾向があり、居場所とは自分だけではなく他人がいてこそ多くの感情を満たせる様々な場所であるということが見えてきました。

また、居場所をテーマにした新しいビジネスアイデアとして、ランドリーカフェや地域交流拠点、空き部屋世代間ホームステイ、メタバース不登校支援などが具体例として提示されました。これらのアイデアは、居場所を「ワタシ」「ワタシとアナタ」「ワタシとミンナ」の3つのペルソナで整理することで、様々な属性の方々を幸せにするアイデアが生まれてくるのではないかというこれからのワークのヒントとなるインプットとなりました。

 

―居場所と感じさせる要素を抽出する/居場所と感じさせる要素の中で特に大切な要素を抽出するー

2つのインプットから感じた、居場所を感じさせる要素をグループで話し合い、特に大切な要素を抽出していくグループワークに移ります。
各チームたくさんの発想のタネとなるポストイットが貼られていきます。


「否定されない」「どんな自分でも受け入れてくれる環境」「強制力の低さ」「プラスとマイナスの共存」など様々な意見が徐々にまとまっていきました。

 




 一人ひとりの視点を深める発想法とフィールドワーク 

―フィールドワークとインタビューのポイントー

Day2のこども食堂でのフィールドワークに向け、フィールドワークの重要性とその方法について学ぶということで、博報堂コンサルティングの岩佐数音さんからインプットがありました。

 


フィールドワークとは、現場に出て観察やインタビューを行い、仮説を発見するプロセスです。フィールドワークの心得として、観察の視点を持つこと、事実や感じたことを記録すること、時間をかけて振り返ることが重要と語ります。また、AEIOUフレーム(上図参照)と呼ばれる、行動、環境、相互作用、モノ、人を観察する方法や、インタビューの具体的な進め方についても詳しく解説してくれました。最後に、フィールドワークを通じて新しい視点を得られるということがよいフィールドワークであると語ってくれました。

―居場所を考える・ターゲットを決める/ターゲットのインサイトを考える/インタビューガイドをつくるー

本日最後のワークとして、まずターゲットである「●●な高校生」の新しい居場所を考えるというテーマで考えてみます。
「受験生」「推しにリアコ(=リアルに恋する)な高校生」「時間に追われている高校生」「気が弱い高校生」など高校生のリアルな視点からターゲットが出されていました。

 


またそこからターゲットが居場所に対して思っていそうなことの洗い出しと、day2のフィールドワークに向けた質問案出しを行いました。

インプットセッションで、最初は答えやすい具体的な質問から徐々に抽象的な質問へ進むのがよいというお話があったので、「こども食堂にはどんな人がくるのか」「ごはんを食べる以外にどんな過ごし方をしているか」という具体的な質問から、「みんなが過ごしやすい居場所づくりのためのポイント」「こども食堂はこどもにとってどんな居場所になっているか」といったより考えを深めるような質問などが様々出て、day2に向けての期待感を膨らませ、盛りだくさんのday1は終了となりました。

 

最後の懇親会の様子。改めて全体に自己紹介を行いつつ、軽食を囲みながら1日頑張ったチームのメンバーと和やかに談笑する様子が見られました。




 Day2 居場所づくりを知る こども食堂へのフィールドワーク 

数グループ3日間に分けて、実際にこども食堂に行って居場所への理解を深めるフィールドワークを行います。今回は足立区竹ノ塚駅にある“がきんちょ”地域食堂さんに同行しました。この施設では母子支援センターも隣接しており、ひとり親世帯や生活保護世帯・外国人技能実習生世帯など、様々な方々のシェルターとして生活支援を行っています。

プロジェクトメンバーから“がきんちょ”地域食堂運営代表の大山光子氏にインタビューを行い、こども食堂の“居場所”としての役割についてヒアリングしていきます。

写真左から3人目 “がきんちょ”地域食堂運営代表 大山光子氏

―いつから、どういう人が運営しているか?

この施設自体は10数年前からですが、その前から居場所づくりの活動はしていました。
その中で子どもたちにご飯を提供したことがきっかけで今の活動につながっています。運営はすべてボランティアで賄っています。PTAやママさん同士など地域の子育てしてきた人のつながりや、夏休み期間にはこども食堂出身の学生が手伝ってくれています。
多い時には50~90人ほど子どもたちが集まるので、スタッフにとっても1つの交流場所になっていますね。

―居心地の良さを作るためには?

深入りせず表情を見て対応し、自由参加を促すことが重要です。多様な居場所を作り、ボランティア活動を通じて社会に貢献します。利用者同士の揉めごとには中立的に対応し、必要な場合は優しく介入します。それぞれの背景を尊重し、無理に交流させないことも大切です。
繰り返し利用してくれる方が多いので、徐々にいろいろなことを話してくれるようになり、子どもの成長をみんなで見守る環境になっています。こども食堂を超えて、多様な居場所が生まれることを目指しています。

このチームでは、居場所づくりのターゲットを“推しにリアコな高校生”と設定しているため、テーマにつながる質問もしてみます。

―利用者の中で特に好きなものがある人とそうでない人の違いは?

好きなものがある子どもは集中力が強く、達成するまでがんばる傾向があります。自分に意思があるから他のことにも挑戦してみようという挑戦意欲も強いです。反対に好きなものがないと何をしていいか分からず、それに伴って集中力が弱くて飽きっぽい子が多い印象です。

17時半からいよいよ「こども食堂」スタートです。

隣の母子支援センターや、30分以上歩いて来ている子どもたちもいて、笑顔で「今日はおいしかった!」と大山さんに声をかける姿が多くみられました。小学校1年生の時からこども食堂を利用していて、いま高校生となり運営のお手伝いをしている青年がいるなど、世代を超えての交流が生まれていました。

印象的だったのは、机に並べられたカラフルなランチョンマット。

大山氏曰く、座る場所を指定して強制はしたくないため、ここに座っていいんだよという、さりげないサインとして重要な役割とのこと。

色とりどりのランチョンマットが明るい空間を演出していました

混雑が一段落した頃、プロジェクトメンバーも試食させていただきました。彩りもキレイで栄養のバランスもよく、手の込んだプレートをいただきます。


19時になってもまだ参加しにくる方々がいらっしゃる中、フィールドワークは終了となりました。

子どもたちに深入りはせず、でもできるだけ“居心地のいい居場所”であるためにそっと寄り添う、そんな細部までのこだわりが感じられました。こども食堂をきっかけに、それぞれに合った居場所をたくさんつくってほしい、そんな居場所づくりへの願いとヒントがたくさん得られたフィールドワークでした。

いよいよday3では、各チームで考えたターゲット“●●な高校生”にとっての“新しい居場所”のアイデアを考えていきます。

3日間の集大成となるday3のレポート(後編)に続きます。