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「ごめんなさい!…… PDFでもらってもいいですか?」 思わず感情移入して最後まで見てしまう機能紹介動画×青春ラブコメディ BOVA協賛企業賞、TCC新人賞受賞作品「PDFラブレター」

 

この映像作品「 PDFラブレター 」は、2023年度「BOVA( Brain Online Video Award)」の協賛企業賞(アドビ)へのエントリー作品として、博報堂と博報堂プロダクツで企画・制作を行いました。

 

協賛企業賞(アドビ)の「PDFの固定観念を打ち破る動画」というテーマに対して、PDFの使い方(機能紹介)を青春ラブコメディとして描き、2023年度 BOVA協賛企業賞を受賞。その後、Adobe Acrobatの公式ドラマCMとしてアドビのウェブサイトにも掲載され、LP制作やLP誘引ショート動画、バナー広告など本作を素材にした様々な仕事にもつながっています。​

 

さらに作品内の象徴的なセリフ「ごめんなさい!…… PDFでもらってもいいですか?」では、企画を担当した河口泰子さん(博報堂)2024年度 TCC新人賞も受賞!現在でもSNSなどで反響も大きく、 ともすれば無機質になりがちな機能紹介動画(PDFの使い方)を青春ラブコメディというハラハラドキドキする人の感情を乗せて、思わず感情移入してしまう映像作品となっています。そんな「PDFラブレター」制作を担当された、映像ディレクターの吉田真也さん、映像プロデューサーの為広晋吾さんにお話を伺いました。

※プロフィールはこちら

 

Brain Online Video Award」(BOVA=ボバ)とは、宣伝会議の月刊「ブレーン」が実施するオンライン動画のコンテスト(コンペ)です。個人、またはグループを対象に、協賛企業から出された課題に対して、解決策となる3分以内の動画を募集する「一般公募部門」と企業・団体のオンライン動画が対象となる「広告主部門」の2部門からなります。(https://bova.co/

TCCとは、東京を中心に日本全国で活躍するコピーライターやCMプランナーの団体である、東京コピーライターズクラブ(TOKYO COPYWRITERS CLUB)が、毎年に実際に使用された広告の中から、一般部門と新人部門に分けて優秀作品を選出し、優れた広告制作者に贈られる賞です。(https://www.tcc.gr.jp/

 

企画が決定したその翌々日にはロケハン!二日間で撮影

 

為広:この「PDFラブレター」は、BOVA協賛企業賞のために制作しました。PDFのハウツー動画でもあり、青春ドラマでもあり、視点も新鮮で、すごくいい企画だなと率直に思いました。青春ドラマなのでエモーショナルなシーンもあり、学校の屋上、部屋、庭などシチュエーションも多かったんですが、今回は制作期間がとても短くて、12月末に企画が決まって、1月末がエントリー期限でしたので、企画が決定したその翌々日、年明け早々にはロケハンに行って二日間で収録。編集も入れて約3週間で仕上げました。

 

吉田:僕もすごく面白い企画だと感じました。当初の企画はそのまま撮影すると応募規定の3分を超えてしまうものだったので、どこを削るか悩む作業からはじまりました。ただ、尺を短くしても、絵変わりをした方が飽きずに観てもらえるのでシチュエーションなどは削りませんでした。そのため、撮影日数に対して撮る分量は多かったのですが、僕は以前、Huluオリジナル「THE LIMIT」の撮影で二日間で30分のドラマを撮影した経験があったので、なるべく早く巻いていく撮影を心がけ、これを撮っておけば大丈夫だろうとイメージして、なんとかなると楽観視していました。

 

為広:確かに、吉田さんにお願いしたのはその実績があったことも理由の一つです。どんどん撮っていけるチームじゃないとこのタイトなスケジュールでは撮りきれないと思いました。吉田さんは自分で編集もできるのでこの映像があれば、このシーンは成立するみたいな仕上がりイメージを想像しながら撮影ができるんです。

CM撮影では、セッティングも含めてコンテでかっちり決まっています。しかし、映画やドラマの撮影ではなかなかコンテや香盤通りにいかない部分も多い。ですので、映画やドラマなど長もの映像を撮っている人たちは焦らないというか、まずはどんどん撮り進めて行って、現場のハプニングも楽しみながら、より良い作品にしていってくれるんです。

今回、撮影を担当したフォトクリエイティブ事業本部の島村カメラマンも自分で照明セッティングや調整もできるので、準備時間があまり取れなかった屋上のシーンなどでも、スパッといい映像が撮れました。

 

吉田:やっぱり、博報堂プロダクツのカメラマンはスチール(広告写真)の経験が豊富なため、照明もディレクションできるので早いですよね。島村さんは自分で判断してくれるのでセッティング時間も短く効率良くできます。CM撮影だと通常1カットずつ撮っていきますが、先ほども言った「THE LIMIT」の撮影では、まず1シーンを通しで撮っていきました。それがうまく撮れていれば、撮り漏れはありません。その経験があったので撮影が二日間しかなくても大丈夫だという感覚がありました。でも結局ギリギリでしたね。

 

為広:ストーリー的には告白の当日とその翌日という二日間の設定でした。その過程でPDFの使い方も段々ブラッシュアップされていくので、香盤も時系列をうまくリンクさせていくように組みました。

 

吉田:役者たちにも「次はPDFでこれを書いてもらう」ときちんと伝え、関係がだんだん深まっていく様子を演じてもらいました。とはいえ、役者たちは皆同世代なので空き時間に自然と打ち解けて仲良くなっていましたね。
 
僕たちも彼らとなるべく話すようにしていましたし、彼らもよく話しかけてきてくれるので現場の雰囲気はとても良くて、一体感もあり一丸となって一気に撮り切りました。

 

冒頭の引きから最後まで魅せ切るために

 

為広:この作品「PDFラブレター」は機能紹介動画ですので、正確にリアリティを持って紹介しなくてはならない。

そのため、僕はPDFを最初から勉強し直す必要がありました。PDF機能を把握していないと訴求ポイントもブレてしまいますし、クリックするとどういうウィンドウがどういう開き方をするのかなど、映像での見せ方、ハウツー動画ならではの表現にもこだわりました。高校生がPDFを使ってラブレターを作るという話なので、難易度の高い機能を使うのも違和感がありますし、高校生が書きそうなイラストにしたり、色使いやフォントなどもリアリティを追及しました。

 

吉田:当時の撮影メンバーは会社の誰よりもPDF機能に詳しかったですね。僕もこの映像を作るまで、Adobe Acrobatを使ってPDFであそこまで編集したりできるとは知りませんでした。この作品制作をきっかけにいろいろと便利な機能を知ったので、実際業務で使うことも増えました。押印シーンもちゃんとオチになっていて、機能にエモさをうまく乗せられました。

機能をただ説明するだけだと、どうしても無機質な動画になりがちです。その動画をいま必要としていない人にどう見てもらうか。優れた機能、新しい機能を知ってもらうことが目的であれば、最後まで見てもらう工夫が必要です。無機質な機能説明に青春ドラマを掛け合わせることで、ハラハラドキドキしながら見れる仕掛けをしました。

例えば、主人公に試練を与え続けていると、それを一生懸命乗り越えようと頑張るため、見ている人が思わず応援したくなる心理が働きます。今回はそれを意識しています。主人公には、なんとなく頼り甲斐がなくて、この人は本当に恋を成就させることができるのだろうか?と少し心配になってしまうようなキャスティングをしました。その主人公を支える友達も親しみやすく味のあるメンバーで構成しています。

 

冒頭の「ごめんなさい!…… PDFでもらってもいいですか?」というセリフ。

河口さんが考えたものですが、このセリフは、この動画の中で一番大事にしなくてならないポイントでした。そのセリフが出てくる屋上のシーンは尺も削らず、長めに見せています。それは僕も河口さんも非常にこだわりました。このシーンもとても綺麗で、丁寧に描いているのですが、よく聞くとセリフが妙というか「あれ?」という大きなインパクトを出しています。これにより冒頭の引きを作っています。

 

その後、告白された女子生徒が告白した男子生徒に向けて何度も課題を出す。

そしてその課題を男子生徒が解決しようとする…。
課題と解決が繰り返され、軽快なラリーがいくつか続きます。

 

それはクイズの出題と解答を見ているような感覚で、続きが気になっていく仕掛けになっています。

そのラリーも回数を重ねるごとに徐々に難易度が増し、友達に助けてもらいながらひとつひとつ試練を乗り越えていきます。主人公の気持ちの変化に合わせて、アップテンポな音楽に切り変えたり、見ている人が感情移入し、一緒に気持ちが変化していくような、飽きさせない演出の工夫もしています。

 

 

僕は、機能説明系の動画の場合、最後にその動画で伝えたいことを簡潔にまとめる(おさらい)みたいなことをよく入れるのですが、この「 PDFラブレター 」では回想シーンとして登場させています。

それはPDFの機能を駆使して、ラブレターを作った結果を見せています。回想シーンを見て、また思い出すような箇所になっていてちょっとグッとくるような、エモい演出をしていてそれが絶妙に効きました。
SNSではその回想シーンで泣けたという声もあり、見る人の感情を揺さぶることができたと嬉しく思っています。今回はこの「魅せ切る」ことを意識して作りました。

 

自分がどこまで突き詰められるのかを試されている

 

為広:「PDFラブレター」は、賞へのエントリーという目標に向かって賛同してくれた人たちが集まっています。予算も時間もない中で作った作品なのですが、制作メンバーの誰もが全く妥協していないんです。メンバーの熱量も高く、クオリティも一切妥協することなく、賞を獲るためにみんな必死で本気でやっていた、気持ちのこもった映像作品です。映像に映りこんでいるメールの返信画面のタイトルなど、実は非常に細かいところまでリアリティを追求しています。もうちょっとこうしておけばよかったみたいなことがほぼなくて、やりきった感がありますね。

 

吉田:為広さんは映像内のPDFデータが映り込むシーンのファイル名など、非常に細かいところにこだわってましたよね。SNSでもその小さな(でも強い)こだわりを発見し、反応してくれる人も多くて。

 

為広:そんな細かいことにこだわらなくても、映像にはなるじゃないですか。でも、とことんリアリティを追求したんですよ。SNSで見つけてもらえるならこだわった甲斐がありました。

 

吉田:「 PDFラブレター 」は、クライアントワークではないため、OKを出すのは自分です。自分がどこまで突き詰められるのかを試されている感は常にありました。自分が妥協したらそれで終わりですし、映像編集でも入れたくても入れられない機能紹介もいくつか出てきたのですが、編集の方もその気持ちを汲んでくれて、工夫を重ね、詰め込めるだけ詰め込みました。「こことここ繋いだら入りました!」と。そんな熱いやりとりもあって楽しかったですね。

 

為広:自然発生的にみんなが非常に高いモチベーションを維持したままやり切りました。企画からすごく面白かったですし、素晴らしい映像も撮れました。


グランプリが獲れなかったことは悔しいですが「協賛企業賞」とはクリエイターや審査員が選ぶのではなく、協賛企業が選んだ一等賞であり「クライアントがいちばん気に入ってくれた動画」という称号なので嬉しいですね。

 

吉田:普段、広告映像を仕事にしている僕たちにとっては「クライアントがいちばん気に入ってくれた動画」というのは嬉しいですよね。

 

■ 映像のチカラ/記憶に残る動画

 

為広:クライアント側も機能紹介動画がこのような形で表現できることが新鮮だったようで、その後、Adobe Acrobatの公式ドラマCMとしてAdobe Webサイトにも掲載され、LP制作やLP誘引ショート動画、バナー広告など本作を素材にした様々な仕事にもつながっています。映像のチカラで新しい仕事を獲得できたのは嬉しいですね。

当初は広告賞用の作品だったこともあり、一般的にはあまり見られることがない映像でした。
1年経って、じわじわとみんなに浸透していって評価されている印象です。記憶に残る良い作品なんだと実感しています。今回のような拡散の仕方は珍しいですよね。瞬間的に大勢の人に見られる広告の仕事とは異なるので面白いですね。

 

Parrots
 
■ これから
 

吉田:映像制作は、制作チームの一体感や完成した時の達成感、映像を見た方からの感想が嬉しいものだったり、いろんなポイントでやりがいを感じます。さまざまなメディアでショートドラマの需要もありますし、映画やドラマをもっと作ってみたいですね。ドラマ仕立てのWeb動画には、家族の話など泣ける王道ものが多いのですが、僕は違うアプローチでコミカルなものに興味があります。

為広:基本的に僕はなんでも頑張ります!これからはCGやバーチャル、AIなどの仕事が増えていくと思いますので知識としてうまく取り入れながら挑戦してみたいなと思います。この「PDFラブレター」みたいにチームの熱量、エモさを人間で表現している映像に魅力を感じます。時代と技術が変わっても、そういう人間臭さが感じられる映像ってどういうものなんだろうと自分の中で答えを見つけていきたいですね。

 

 

 

プロフィール

吉田真也(よしだ・まさや)/映像クリエイティブ事業本部 企画演出部 ディレクター

CMやSNS動画のディレクターとして幅広く活動。Huluドラマ「THE LIMIT/タクシーの女」ではアジア最大級の国際短編映画祭Short Shorts Film Festival & ASIA2022のジャパン部門最高賞を受賞。第95回米国アカデミー賞短編映画部門のノミネート候補に選出された。社内の長尺動画チーム「Minutes Movie」所属。

 

為広晋吾(ためひろ・しんご)/映像クリエイティブ事業本部 プロデューサー

映像は制作に関わる人々のまっすぐな気持ちがぶつかり合って生まれるものだと思います。

“ハートのこもった制作“をモットーに、その気持ちが視聴者の心に届く映像づくりを大切にしています。

人物ドラマ、食品シズル、CGアニメーション、どんな表現でも全力でプロデュースします。

 

スタッフ・キャスト

企画制作/博報堂+博報堂プロダクツ
ECD/嵐田光(博報堂)、企画+C/河口泰子(博報堂)、Pr/尾嶋雄二・為広晋吾(博報堂プロダクツ)、PM/鈴木佑京、演出・監督/吉田真也(博報堂プロダクツ) 、撮影/島村朋子(博報堂プロダクツ) 、編集/平賀彩、久保田亮、録音/青沼 修志、松下 秀男(博報堂プロダクツ) 、グレーディング/浦田淳(博報堂プロダクツ) 、ST/綾部秀美、HM/藤本希、CAS/石垣光代
出演/今西洋翔、中島真白、加藤槙人、鈴木勇磨

 

関連サイト

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