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博報堂プロダクツの各コア事業が追求している専門技術を駆使した新しい取り組み、
最新ソリューションおよびプロフェッショナル人材などを紹介します。

食と農をつなぐ「はくほうファーム」農作業体験レポート -田植え編-

2024年6月7日~8日に山梨県北杜市の「はくほうファーム」で開催された農作業体験に当社社員が参加しました。田植えから収穫まで長い時間をかけるお米づくりの過程を体験することで、毎日食べているお米がどのように作られ、どのような人たちが関わっているのかを知ることができます。食と農をつなぐ体験と博報堂グループ社員同士の交流、育てたお米を余すことなく活用するプロダクトの配布を通じて、新しい循環や発見を生み出していく本取り組みをご紹介します。


2011年12月、山梨県北杜市にある耕作放棄地を開墾するところからスタートした「はくほうファーム」は、博報堂・博報堂DYメディアパートナーズの社員が農作業体験を通じて、タテ・ヨコ・ナナメの関係づくりを促進する取り組みです。コロナ禍を経て2023年秋から、博報堂グループ連携強化と新たなるインナーコミュニケーションを目的に加えて農業体験が再開され、当社もサステナビリティ活動の一環として参画し始めました。今回「はくほうファーム」では5年ぶりに、博報堂グループ社員が昔ながらの手作業で田植えを体験しました。

<はくほうファームの一年>

12月~3月 精米後の米ぬかを発酵菌で温室ハウスにて発酵させる
2月 土壌検査
3月 発酵した米ぬか、発酵鶏糞、苦土石灰(ドロマイトを原料とする天然資材)を、土壌検査をもとにはくほうファームに散布する
4月上旬 種もみの塩水選、温湯消毒、浸種
4月中旬 種もみの播種(温室ハウス内)
4月中旬~5月下旬 稲の育苗(温室ハウス)
5月下旬~6月上旬 代掻き、田植え
6月上旬~7月末 水田の除草
5月下旬~10月中旬 水田の水見、土手草刈り、鳥獣害・いもち病等の観察および対処
9月下旬~10月下旬 稲刈り
10月下旬~11月 乾燥、脱穀、精米

 土に触れてつながりを育む農作業体験 

東京から約2時間30分移動して、バスを降りると深呼吸したくなるような爽やかな空気。どの方角を見ても山や草木の緑が美しく映えていました。編み笠をかぶったNPO法人えがおつなげて代表の曽根原さんが笑顔で出迎えてくれました。田植えは慣れない足場で腰を落とし続ける重労働ということで、バス移動で固まった身体を、山梨ならではの甲州弁ラジオ体操でほぐしていきます。ほとんどのメンバーが初めての田植え体験なので、曽根原さんから田植えのイロハを教わっていきます。


田植えは苗を植える間隔や1株に植える苗の本数などのポイントを伺い、効率的に作業を進めるために、目印がついたひもを両端からぴんと張って、等間隔に植えていきます。苗を3~4本束にしたものを、指で挟み、土に向かって垂直に植えていきます。苗は深く植えすぎてしまうと初期生育を阻害し、浅く植えすぎると苗が横に倒れてしまうため、絶妙な加減が難しい。慣れない田んぼのぬかるみに四苦八苦しながらも、1株ずつ丁寧に苗を植えていきます。3株分でようやくご飯1杯分になるとのこと、食べ物が私たちに届くまでの大変さを実感しました。午前中の作業を終え、田んぼの脇を流れる水路からの冷たい水で泥を落とし、のどかな田園風景に囲まれて食べる手作りのお弁当は格別です!



「はくほうファーム」に植えた品種「ひとめぼれ」は、寒冷地に強く、標高1,000メートルを超える場所に最適です。澄んだ空気と綺麗な水、有機農法を継続した栄養豊富な土壌で害虫も少ない環境だからこそ、旨味がたっぷりで安心安全なお米が育つそうです。田んぼに目を向けると、土の中に生息するミミズを何度か見かけました。ミミズは土壌中の有機物を食べて土を耕してくれるので、有機農法の存在に欠かせません。このように豊かな土壌環境が、食物連鎖に貢献する豊かな生態系を育むことを実感しました。

午後の作業は次第にコツを掴んだようで効率的に進んでいき、隣同士で和気あいあいとコミュニケーションを取りながら連携する様子がありました。隅まで農地を余すことなく苗を植え、ようやく終了!予定の時間よりも30分ほど短縮しました。力を合わせ、励まし合って効率的に作業を進める姿は博報堂グループのチームワークならでは。初めての手植えとは思えないほど綺麗に揃っており、NPOの皆さんも「さすがクリエイティブな会社ですね!」と太鼓判。心地よい疲労感と達成感に浸りながら、最後に曽根原さんお約束の「お田植えモリモリ!」の掛け声に合わせて記念写真を撮りました。


 食と農をつなぐ循環型ビジネスの視点を共有 

無事に田植えを終えて、温泉施設で汗を流した後、日本百名山のひとつである「みずがき山」を望む宿泊施設に到着。曽根原さんに、日本の耕作放棄地の現状や「はくほうファーム」の開墾にまつわる活動についてお話を伺い、当社インセンティブプロモーション事業本部メンバーからは、お米を起点とした循環型ソリューションの紹介を通じて、社会課題をいかに私たちの業務の中で解決していくかという視点を共有しました。

翌日には、「夢(これから挑戦したいこと)」「食」「仕事で大切にしているポリシー」「趣味(推し)」をテーマにしたワークショップWorld Caféを実施し、お互いの考えや想いに触れることができました。「粒ぞろいより、粒違い」という博報堂グループならではの魅力を改めて実感する良い時間を過ごしました。そして前回「はくほうファーム」で収穫したお米を脱穀(だっこく)する時に出た籾殻(もみがら)を、FSC認証紙としてアップサイクルして制作した「もみがらノート」を参加者の皆さん、NPOスタッフの皆さんに配布しました。お米を育てて食べるまで全てのプロセスを余すところなく活用し、捨てられるはずの廃棄物がデザインやアイデアの力で生まれ変わり、食と農の新しい循環を生み出す取り組みにつながっていくことを、実際のプロダクトを通じて紹介しました。


 参加者の声 

“研修参加以前から無農薬や自給自足について興味がありました。近年、米農家が減っている中でこういった取り組みを行うのは「食」について考え直す良い機会だと思います。「つながり」といった面でも普段の仕事の枠を越え博報堂グループの方達とも気軽に話すことが出来ました。特に営業、広報、マーケティングといった仕事で直接関わる機会の少ない職種に関する体験談には非常に刺激を受けました。”

“実際に自分の手で苗を植え、お米をいただくことで、耕作放棄地など日本の「土地」と「食」の持続可能性に関する問題を自分ごととして捉えるきっかけになりました。また、農作業やワークショップを通じて普段は関わることのない部署、職種の方々とじっくりお話しでき、思っていた以上に充実した時間を過ごすことができました。思い切って申し込んでよかったです。”

仕事から一時的に離れ、農作業をする時間はとても良いリフレッシュの時間となりました。また、お茶碗1杯分のお米になるまでに多くの時間がかかり、さまざまな工程を必要としていることを実際に体験しながら学べたため、食べ物の大切さを今一度感じることができた有意義な時間でもありました。そして、今回の農作業を通じて社内に新たな繋がりが多くできたので、今後は業務に繋げられたらと考えています。


最後に、「はくほうファーム」のある農山村地域では、過疎化や高齢化が深刻で農業に従事する人が年々減少の一途をたどっています。「はくほうファーム」から道路を挟んだ向かいの土地もお米づくりができなくなってしまい、去年までその土地が田んぼだったとは思えないほど雑草が生い茂り、農地を維持管理し続けることの難しさを目の当たりにしました。今回の農作業体験では、お米づくりの楽しさや難しさを体験することで、食と農の持続可能性を考えるきっかけとなりました。また、籾殻のアップサイクル事例をはじめとするビジネス開拓のヒントを得ながら、今後も食と農をつなぐサステナビリティアクションを推進し、循環を生み出す取り組みを継続していく予定です。


参考記事:
地域資源のアップサイクルをクリエイティブで実現 “もみがらノート”制作ストーリー
食と農の新しい循環を生み出す「はくほうファーム」農作業体験レポート