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「テクニカルディレクションの知見を共有しよう」
と始まった交流

「テクニカルディレクション
の知見を共有しよう」
と始まった交流

熊谷
私たちの出会いっていつ頃でしたっけ?
清水
私と博報堂グループの関わりからお話しすると、最初はBASSDRUM を立ち上げようかというタイミングでhakuhodo DXD*の方が声をかけてくれて、そこからずっとhakuhodo DXDと仕事をしていたんです。独立する以前、私はデジタル制作会社に所属していて、どちらかというと博報堂アイスタジオと一緒に仕事をすることが多かった。その頃の博報堂プロダクツといえば、「デザインなどをする会社」というイメージが強かったですね。

*hakuhodo DXD:テクニカルディレクターなどの専門人材によるDX(デジタルトランスフォーメーション)推進プロジェクトチーム。構想にとどまらず、実装・運用までを一気通貫で担う。

熊谷
確かに。その頃はあまり対外的に「デジタルの会社」というイメージはあまりなかったかもしれないですね。
清水
ただ、hakuhodo DXDと一緒に仕事をする中で、間接的に博報堂プロダクツとも仕事をすることが増えてきて、徐々に博報堂プロダクツのデジタル分野での取り組みも見えてきました。
熊谷
うんうん。
清水
そうこうしているうちに、博報堂プロダクツのデジタルプロモーション事業本部(以下、デジプロ)の方をご紹介いただいて。BASSDRUMはテクニカルディレクターという「技術監督」が集まる集団で、テクニカルディレクションの知見が集約しているコミュニティなので、同じ方向をめざしている博報堂プロダクツとも情報共有したり交流したりしていこうと。そのような提携を結ばせていただいて、博報堂プロダクツからの案件のお手伝いもさせていただくようになりました。
熊谷
そうですね。私と清水さんと、hakuhodo DXDの方とテクニカルディレクターの在り方について語り合ったり、競合プレゼンも同じチームで一緒に企画もやらせていただいたりもしました。

制作担当者が案件の
中心にいる・・・
その光景に驚かされました

清水
ただ、一緒に活動するようになった当時、私はニューヨークを拠点にしていたので、熊谷さんにはずっと会ったことはなくて、本物の熊谷さんにお会いできたのはつい最近でしたね(笑)。
熊谷
そうでしたね。ちょうどこの近くのお店で(笑)。
清水
出会った当時に驚いたのは、熊谷さんは制作サイドでテクニカルな部分の責任者という立ち位置でありながら、営業の方やクリエイティブ職の方とか、みんなが熊谷さんに意見を求めているんです。クライアントへのプレゼンでも熊谷さんが中心になって活躍している。競合プレゼンでも中心にいるわけです。自分は制作会社にいた頃から「制作サイドがしゃしゃり出ると怒られる」というイメージがあったので、作り手をリードする立場として熊谷さんのプレゼンスが高かったのは驚きでしたね。
熊谷
「それはちょっと実現が難しい」「その方向に行くとリスクがある」というタイミングで私が前に出ていったり、「技術のことはこの人に聞けば大丈夫」というポジションを作っておけば、(技術的な)取りまとめがしやすいと思います。加えて、新しい領域にトライしようとすると、(それぞれの担当者に)技術的なリテラシーの差も出てきます。そこを埋める立場というイメージですね。

広告会社と制作会社が
対等なタッグを組んで
モノづくりをする時代に

清水
時代の変化によって、いろいろな技術を統合的に組み合わせてモノづくりをしなければならなくなったので、クライアント、広告会社、制作会社という立場の違いを明確にして流れ作業的に進めていくのではなく、それぞれの当事者たちがニュートラルな立場でモノづくりができる状況になってきているのかなと思います。いい時代というか、真っ当にモノづくりができる時代になったというか。
熊谷
清水さんのお話を踏まえると、博報堂を含めて広告会社は(制作会社と対等なタッグを組む)そういう動きをしていかないと、闘えなくなる時代になっているのかなと思います。企画やアイデアを構想する段階で、それを「実現できる」というところまで担保しないといけない。そうなると、社内外にいる実際の作り手を構想段階から巻き込んでいく必要がある。そういう動きはここ数年で加速していると思いますね。「作れる人を傍に据えながら考える」というhakuhodo DXDの考え方もまさにそうです。
清水
そうした動きに私たちBASSDRUMも協働させてもらえているというのは、本当にありがたい話です。実際、「そういう世の中になったらいいな」というのは私たちの思いでもあります。
熊谷
そうなってくると、テクニカルディレクターという職種に対する業界内のニーズは高まってきていると思うんです。博報堂プロダクツとしてもテクニカルディレクターの人材強化は大きな課題で、清水さんとも一緒にアイデアのディスカッション、案件の進め方、技術の活用方法などをテーマにしたワークショップなどをさせてもらっています。まだまだ発展途上ですが、とてもいい効果が生まれていると感じています。

テクニカルディレクターに
必要なのは
「技術の応用力」

清水
テクニカルディレクションという仕事は、単純にモノを作れればいいというものではなくて、その作り方や、作った先にあるゴールを含めて「何を作るのか」という段階から当事者のコミュニケーションの中で技術的な舵取りをするものだと思っています。単純に技術を学ぶのではなくて、その技術を身につけるとどのような応用ができるのか。コミュニケーターとしてどのような武器になるのか。ひとつひとつの要素技術にフォーカスするのではなく、いろいろな技術を触っておくことが技術的なコミュニケーションをする上で役に立つ。具体的に技術を使いこなすだけでなく、抽象化しても応用が効くことを意識しています。
熊谷
おっしゃる通りですね。技術的な感覚とか考え方をインストールされているというイメージはあります。
清水
それが、ワークショップの中では非常に重要なのかなと感じています。
熊谷
技術に関するスキルは追いかけるとキリがないじゃないですか。感覚や考え方を身につけるということがとても大事なのだと思います。例えば「この辺って、実現するにはこういうAPIがありそう」「こことここを繋げる技術ありそう」という感覚や「この技術って、実はこういう使い方もできる」という応用力ですね。

「手段が目的化する」
という
最新技術あるある

清水
例えば、人工知能やブロックチェーンといった最新技術が出てくると、そこに対する価値を過大評価してしまう傾向がある方もいます。
熊谷
ありますね。技術に踊らされてしまう。
清水
踊らされてしまうというのもあるし、人工知能やブロックチェーンを使う!と決めたら、もうそれらを手放せなくなってしまう。
熊谷
こだわりすぎてしまう。
清水
私たちのようないろいろな技術を理解しているテクニカルディレクターにとっては、人工知能やブロックチェーンはあくまで数多くある手段のひとつであって、さまざまな技術を知っておくとアイデアの実現を考える中で技術を簡単に手放せられるんです。
熊谷
確かにそうですね。
清水
特定の要素技術にこだわらなくても、モノが作れるようになるんです。
熊谷
「手段の目的化」が起こりにくくなりますね。

技術を
賞賛しすぎてはいけない

清水
(当初使いたかった)技術を簡単に手放すというのも、私たちにとっては重要なポイントだと思います。技術にあまり強くない人が集まると「技術を賞賛しすぎてしまう」じゃないですか。
熊谷
それはありますね。最新技術に傾倒してしまう。
清水
そうならないようにするためにも、プロフェッショナルである私たちテクニカルディレクターが存在するのかなと思います。
熊谷
まさに舵取りをしていく立場ですね。
清水
いわゆる「過去の技術」も含めて、水平思考していくことが大切だと思います。例えば、Webの開発技術もその経緯からしっかり理解しておくと、単純にWeb技術を使いこなすだけでなく「これからどのような可能性があるのか」を考えられる。技術を文脈から理解するという視点も大切ではないかと思います。
後編に続く